トランプ政権への懸念

●新型大国関係を受け入れたティラーソン国務長官

 習近平主席は、「偉大なる中華民族の復活」を掲げて中国のリーダーとなった。そして、彼は、2013年6月のオバマ大統領との会談の中で、米中の「新型大国関係」を提案して以来、一貫して米国と中国との新型大国関係を主張している。

 中国にとっての「新型大国関係」とは、米中が対等の立場であることを前提として、各々の国益を認めること。特に中国にとっての核心的利益を認めること。つまり、チベットや新疆ウイグル両自治区、台湾などの中国国内問題や東シナ海と南シナ海の領土問題に対して米国は口を出さないこと、手を出さないことを要求している。

 しかし、オバマ大統領(当時)は、新型大国関係の危険性を理解し、習近平主席の要求を拒否してきた。このオバマ前大統領の拒絶は当然である。

 レックス・ティラーソン国務長官は、習近平主席との会談において、習氏が主張してきた米中の「新型大国関係」を実質的に認める発言を自発的にしてしまった。

 つまり、中国側が「新型大国関係」を説明するのに使ってきた「衝突せず、対抗せず、相互尊重、ウィン・ウィン(nonconflict, nonconfrontation, mutual respect, win-win cooperation)」という諸原則を国務長官として最初の習主席との会談において自ら自発的に発言してしまった。

 これは由々しき問題であり、この新型大国関係を認めたということは、中国が核心的利益と主張する台湾、チベット、東シナ海、南シナ海について中国の主張を認めるということであり、日本への影響も大きい。いくら新任の国務長官であっても今回の発言はひどい。

 ティラーソン国務長官のみならずトランプ大統領以下の閣僚が中国との新型大国関係を認めるとしたならば、我が国はいかに対処すべきか悩ましい事態になる。

●トランプ大統領はドラゴン・スレイヤー(反中派)なのかパンダ・ハガー(親中派)なのか?

 トランプ氏は、選挙期間中は為替操作国であり米国の貿易赤字の元凶であると中国を厳しく批判し、大統領選挙勝利後も一中政策(一つの中国政策)を認めないと発言するなど、ドラゴン・スレイヤーの評価であった。

 しかし、日米首脳会談直前に一中政策を認めると発言し、最近では中国は為替操作国ではないと発言するなどパンダ・ハガーに変身したのではないかと思うほど、その発言は急変している。

 歴代大統領の中で、当初、中国に厳しい発言をしていたビル・クリントン大統領(当時)やジョージ・W・ブッシュ大統領(当時)が最終的には中国と親しい関係になったように、トランプ大統領も同じように中国とことを構えない大統領になるのではという懸念がある。

 トランプ大統領の誕生に伴い中国はいかにトランプ氏に対処するかを検討した結果導き出された1つの結論が、トランプ大統領の最側近である「イヴァンカおよびクシュナー夫妻を取り込むこと」であり、猛烈な外交攻勢により2人の取り込みが実現しつつあると言われている。

 この2人がパンダ・ハガーになれば、トランプ大統領もその影響を受けるであろう。その時に日本は米中に対していかに対応するかが問われる。