そのディールとは、中国に北朝鮮を説得させ核・ミサイル開発を断念させる、それに成功すれば中国とのより友好的な関係(中国を為替操作国と呼ばない、貿易などをめぐる敵対的な姿勢を緩和する、THAADの韓国配備延期や中止など)を保証する、というものである。

 事実、中国が主体となって北朝鮮を説得する努力がなされていて、その結果が出るまでは米軍の北朝鮮に対する爆撃・ミサイル攻撃・斬首作戦などの軍事行動はないであろうというのが筆者の意見である。

 以下、トランプ大統領の変化について、米国の北朝鮮に対する軍事行動について、トランプ政権に対する懸念について記述する。

トランプ大統領の対外政策
対外不介入主義から単独行動主義に変化した

●選挙期間中に主張した対外不介入主義(non-interventionism)

 選挙期間中にトランプ氏が主張した対外政策は、米国ではしばしば孤立主義(isolationism)と呼ばれてきたが、中西輝政氏が指摘する*1ように対外不介入主義という語句が適切であり、この語句を採用する。

 トランプ氏は、米国外の紛争への不介入を主張し、ジョージ・W・ブッシュ元大統領が始めたイラク戦争を手厳しく批判し、米国が軍事力により外国の政権転覆を図ること、その後の国家再建に関与することに大反対してきた。

 彼が主張するアメリカ・ファーストの意味するところは、「世界の諸問題には関心がない。米国はもはや世界の警察官ではない。アメリカさえ強く豊かになればいい」ということである。

 彼のアメリカ・ファーストの主張は、まさに対外不介入主義であり、2001年から15年以上も続く対テロ戦争にうんざりしていた多くの米国人の支持を得た。

●単独行動主義(unilateralism) への転換

 トランプ氏の対外不介入主義は、シリアの化学攻撃で苦しむ子供たちの映像が全世界に流された瞬間に吹き飛んでしまい、単独行動主義に転換した。

 シリアに対するミサイル攻撃に対しては、スティーブン・バノン首席戦略官の反対を押し切り、リベラルな考えの持ち主のイヴァンカおよびクシュナー夫妻の助言に従って実行されたと報道されている。

 今回のトランプ氏の反応は、米歴史学者のエドワード・ルトワックが言うところの「冷静な考えが最も必要とされる瞬間に、突然の感情の激流に人々が襲われてしまう」症状である。

 要するに、トランプ氏の対外不介入の主張は確固たる信念に基づくものではなく、当時の激情によって簡単に単独行動主義に転換するものだった。彼は、この転換を柔軟性の発揮だと言うが、節操のなさと批判する者も多い。

●軍事力の活用の仕方に関するオバマ政権とトランプ政権の違い

 米国は世界一の経済大国、軍事大国である。世界の諸問題の解決においては、この2つのパワーをいかに活用するかがカギとなる。

 オバマ政権は、世界最強の軍事力を活用した問題解決が極めて下手であった。オバマ氏は、北朝鮮の核・ミサイル開発問題、南シナ海の人工島建設問題、シリア内戦問題などにおいて、まず軍事力による解決を否定し、それを公言してしまった。

*1=中西輝政、「日本人として知っておきたい「世界激変」の行方」、P76