OPECが減産を延長しなければ原油価格は急落か

心中穏やかではない訪日するサウジアラビア国王

2017.03.02(木) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49305
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 フランスの大手石油会社トタールCEOは2月21日、ブルームバーグとのインタビューで「世界の過剰な在庫を減らすことを目指すのであれば、減産の実施期間を6カ月からさらに延長する必要がある」との認識を示した。オランダに本拠を置く大手投資銀行ABNアムロも「OPECの減産が延長されなければ原油価格は1バレル=30ドルに向け下落する公算が大きい」と警告を発している(2月22日付ブルームバーグ)。

 原油価格が1バレル=60ドル以上に上昇しないことを不満とするイラク政府は、OPECの臨時総会の開催を要求している。しかし、会合を開いたところで具体的な対策が打ち出すことが出来なければ逆効果となる。ロシアのノバク・エネルギー相は「主要産油国による6月末までの減産合意を延長すべきかどうかを4月か5月に判断する」との見方を示しているが、いずれにせよ次回のOPEC総会(5月25日)までにはその是非を決定しなければならない。

板挟みに悩むサウジアラビア

 市場では「今年夏までのOPECの減産期間が延長される」との憶測が流れ始めているが、今回の減産で「優等生ぶり」を発揮しているサウジアラビアは「現時点で延長の必要はない」との考えを変えていない。

「かつてのような『スイングプロデユーサー(需給の調整役)』を引き受けることにより、自国のみが『割を食う』事態はなんとしてでも避けたい」との気持ちは強いだろうが、市場の期待を裏切れば「手痛いしっぺ返し」を食らう。

 板挟みに悩むサウジアラビアにとってさらに悪いニュースが飛び込んできた。サウジアラビア政府が来年後半に株式公開を予定している国営石油会社「サウジアラムコ」の評価額が、事前予想の2兆ドルを大きく下回るとの分析が出たのだ(2月24日付ブルームバーグ)。

 業界幹部やアナリスト、投資家が明らかにした分析(原油埋蔵量や様々な課税シナリオの下でのキャッシュフロー予想に基づく)によれば、サウジアラムコの評価額は、サウジアラビア政府が想定する2兆ドルの5分の1(4000億ドル)になる可能性すらある。エネルギーコンサルタント会社ウッド・マッケンジーは「サウジアラムコが1.5万人にも上る王族の収入源になっていることが株式価値を下げている」としている。

 サウジアラムコの評価額が大幅に落ち込むことはサウジアラビア政府にとっては一大事である。サルマン国王が寵愛するムハンマド副皇太子が推し進める「ビジョン2030」ための主財源がサウジアラムコの株式売却(5%分)から得られる収入だからだ。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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