TPPに関してネジレが起きている様子です。
米国大統領選の「転倒」で、今まで旗を振ってきた米国が批准から撤退という引き潮の傍らで、国内で進んでしまったらしい調整の惰性が逆方向に振り切れつつあり、どうなることか、率直に心配です。
長年このコラムをご覧の方はお気づきかと思いますが、TPPは私が一切触れない話題の1つです。あるいは沖縄問題、最近ならトランプ候補といった話題も、コラムに書くということは一切したことがありません。
それは、興味がないとかいうことではなく、書くものを選んでいるだけの話で、重要ではないと思っているわけでは決してありません。
ただ、それに言及して公器に記す役回りに自分は明らかに当っていない。むしろそれと補い合う方向で、私自身も一定の範囲でコミットしている話題、例えばAIであったり、IoTであったり、ビッグデータであったり、を提供したいと思っています。
今回はトランポリン逆転選挙結果やら、TPPねじれやらを横目に見つつ、EU~ドイツ連邦共和国の産業指導陣が何を考えているか、ドイツ連邦工学会主催のシンポジウムに出席しているミュンヘンから最新の話題をお届けしましょう。
「リストラ」の訳語が示唆するもの
ドイツ連邦共和国は2011年に「インダストリー4.0」という連邦国家レベルでの技術政策指針を発表しました。
日本ではある時期、特殊な形で紹介され、一部ブームにもなりましたが、必ずしも正しく理解されているとは言えません。
「インダストリー4.0」の本質を一言で表すなら、「製造業のデジタル化=IT化」にあります。
これを「第4次産業革命という旗印はもの作りのスマート化を目指し、自ら感じ考える工場、スマートファクトリー化によって人件費節減、米国や日本に対抗する競争力を強化する」といった論調で報道する傾向は、どうも日本が一番顕著であるように思われてなりません。
何かと言えば、「ヒトの首を斬りたがる」論調が、日本のある種のマスコミには長らく観察されます。
例えば「リストラって何ですか?」と問うてみましょう。ネットの辞書には次のような表記がありました。
「企業が不採算部門の整理、成長分野への進出など、業態の再構築をはかること。俗に、余剰人員の整理。解雇」
日本語としては正解でしょう。