ここまでの連載で、IoTの基本的な考え方や構成から、身の回りにも増えてきたIoTの実例までを見てきました。今回は少し見方を変えて、IoTを実現するために欠かせない「通信」について考えていきましょう。

モノとコンピューターの間を結ぶ通信

 IoTは、さまざまなモノがインターネットなどのネットワークを介して、クラウドなどのコンピューターとつながることで実現します。ということは、モノとコンピューターの間を結ぶ通信が必要になるわけです。

 通信というと、しばらく前までは有線の回線を使うことが当たり前でした。電話もパソコンも、通信するものはケーブルがつながっていました。それが今では無線で通信することのほうが一般的になっています。IoTになったとき、さまざまなモノをケーブルで結びつけるのはあまり考えたくない図です。無線を活用したいところですよね。

 「それならば、IoTデバイスに携帯電話の機能をつければいいではないか!」

 もちろん、それはとても正しい考え方です。携帯電話ならば日本の中で人間が行動するほとんどのエリアをカバーして、無線の通信が可能です。

 でも、ちょっと考えてみてください。スマートフォンなどで使う格安SIMサービスをご存知でしょうか。大手の携帯電話事業者よりも割安で携帯電話のサービスを利用できるものです。その中で安いプランを見ていくと、月額1000円を大きく下回って月額300円~500円程度のサービスが見つかります。

 これは通信回線のサービスとしてはかなりの低料金です。でも身の回りのIoTデバイスが10個あったら、それでも月額数千円かかるわけです。家の中に100個のIoTデバイスがある時代になったら・・・。ちょっと考えたくない金額になりそうです。

 さらに、それぞれのIoTデバイスにバッテリーを内蔵して、毎日のように充電しなければならないとなると、その手間もかかります。携帯電話の電波が通じにくい建物の奥や地下などでは、IoTデバイスを活用できないといった問題も起こってきそうです。携帯電話の通信機能があれば、それだけで上手くいくとは言えないのです。