「ミツバチ問題」は農薬規制だけでは解決しない

養蜂とはちみつの過去・現在・未来(後篇)

2016.09.23(Fri) 漆原 次郎
筆者プロフィール&コラム概要
養蜂に用いられているセイヨウミツバチ。

 日本における養蜂とはちみつの過去、現在、未来に目を向けている。

前篇ではその過去の歩みを追ってきた。大きな流れは、養蜂については、江戸時代までのニホンミツバチを利用した伝統的手法から、明治以降のセイヨウミツバチや欧米の用具を利用した近代的手法へ、というもの。はちみつについては、薬用から食用のはちみつへ、というものだ。大きな転換を日本は経験した。

 近代的養蜂は戦後も続いていった。ところが、突如として2000年代半ば「ミツバチの大量消滅」が日本を含む世界で起きていると伝えられるようになった。各国の政府や研究機関が真相解明を進めるなかで、「ネオニコチノイド」という殺虫剤を用いた農薬が、ミツバチ大量消滅の原因となっている可能性を指摘する声が高まってきた。

 最近の報道では「農薬が原因。だから農薬の禁止を」といった単純な構図で伝えられることが多い。だが、ネオニコチノイド系農薬を禁止すれば、ミツバチの未来は安泰なのだろうか。

 後篇では、ミツバチ研究をする研究者に、ミツバチ減少問題をどう考え、なにに取り組むべきなのか聞くことにした。応じてくれたのは、玉川大学ミツバチ科学研究センター教授の中村純(なかむら・じゅん)氏だ。行動生態学や生産物などを対象に、幅広くミツバチを研究してきた。長年ミツバチと接してきた研究者の目に、現状はどう映っているのか。

欧州ではネオニコチノイド系農薬を規制するが・・・

 ミツバチは、花の蜜から作るはちみつや、花の雄しべに付いている花粉を餌に繁殖する。働きバチがもたらす花由来のこれらの餌は、巣にいる女王蜂の産卵や、孵化した幼虫が成長するための共有物となる。

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1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。


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