原油相場が「強気」と「弱気」で揺れ動いている理由

当面は堅調に推移、だが需給面は悪くなっている可能性が大

2016.08.26(金) 藤 和彦
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47712
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 今年前半の増産凍結協議を模索する過程で、イランは「経済制裁前の水準に原油生産が達するまでは増産凍結協議には参加しない」との姿勢を貫いていた。しかしイランの7月の原油生産量が日量約360万バレルと制裁前の水準(同400万バレル)に近づいており、前述のロイター記事が、「前回の協議の最大の障害であったイランが参加する」との市場の期待を後押しした。

原油価格の回復は引き続き脆弱

 今後、原油相場はしばらくの間、ニュースのヘッドラインに主導される形で堅調に推移しそうである。しかし需給面では何ひとつ変わっていない。いや、むしろ悪くなっている可能性が高い。

 市場関係者が注目している増産凍結だが、前回の交渉で凍結が提案された今年1月の生産水準よりも、現在の生産量は日量100万バレル増加している(イランとサウジアラビアの増産が原因)。凍結の水準が日量3300万バレル(OPEC全体の生産量)ではなく同3400万バレルならば、市場の再均衡は少なくとも1年遅れ、2018年以降になるとの見方がある(8月19日付ブルームバーグ)。

 ゴールドマンサックスは8月22日、今後1年間の原油価格の見通しを1バレル=45~50ドルで据え置いたことを明らかにした。8月の原油価格上昇は“投機筋のポジションの急激な変化”などに起因しており、ファンダメンタルズの改善ではないとみているからだ。原油価格の回復は引き続き脆弱との見方を改めて示した格好である。

 また、ゴールドマンサックスのレポートの中で注目されるのは、記録的に高いレベルの原油生産量を維持しているOPECの原油生産“凍結”よりも、イラク、ナイジェリア、リビアにおける供給障害の“雪解け”のほうが原油相場のリバランスに影響を与えるという指摘である。

 イラク政府は今年3月、パイプラインを支配するクルド自治政府との支払いを巡る問題で、北部の3油田の輸出を停止していた。だが、クルド自治政府との交渉がまとまり、8月22日、数日以内に原油輸出を日量約15万バレル(5%)増加すると発表した。翌24日には、イラン石油省は9月のOPEC非公式会合での生産量確保の観点から石油各社に対して増産を要請した(イラク首相は23日、OPECの増産凍結に消極的な姿勢を示した)。

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経済産業研究所上席研究員。1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

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