臼と杵でつくお餅はどうしておいしいのか?

変わるキッチン(第9回)~つく

2014.12.26(Fri) 澁川 祐子
筆者プロフィール&コラム概要
杵と臼で行う餅つき。年末年始の風物詩だが、見る機会は少なくなった。

 年末年始にかけて、町内会の餅つき大会の張り紙を目にすることがある。そのたびにちょっと行きたいと思って日にちや場所を確認するものの、結局行ったためしがない。

 つきたての餅をもうどのぐらい食べていないだろうか。10年近く前、世田谷のボロ市で行列に並び、名物の「代官餅」を買ってその場で食べた記憶がある。あれは確か、きなこ餅だったっけ。ふわふわの食べごたえのある大きな餅だった。あれが最後となると、もう長らくつきたての餅を食べていないことになる。

 昔は、年末にはどこの家でも餅をついたという。町では「賃づき屋」がまわり、人手のない家でもつきたての餅を準備することができた。だが、いま巷では、餅つきは年末年始の行事の出し物としてかろうじて残っているにすぎない。

 そんな数少ない機会で、つきたての餅の味を覚えた人も少なくないだろう。ほんのりとあたたかく、ふんわりとやわらかい。かじれば、なめらかな舌ざわりとむっちりした歯ごたえ。一度食べると、忘れがたい味になる。

 その証拠に、ネットで「つきたての餅」と検索してみると、「パックの切り餅がつきたてのお餅みたいになる方法」という話題がたくさん挙がってくる。やはりみな、つきたての餅が食べたいのだ。だが、そう簡単には手に入らない。だから、あの味をどうにか再現しようと知恵を絞っているのだと、ちょっぴり切ない気持ちになった。

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1974年、神奈川県生まれ。東京都立大学人文学部を卒業後、フリーのライターとして食や工芸・デザインを中心に、読むこと、食べること、暮らすことをテーマとしたインタビューやルポ、書評を執筆。『森正洋の言葉。デザインの言葉。』(ナガオカケンメイ監修、美術出版社)、『最高に美しいうつわ』(SML監修、エクスナレッジ)の取材構成ほか、近著に当連載をまとめた『ニッポン定番メニュー事始め』(彩流社)がある。


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