日本料理の幅を大きく広げた
すり鉢のぎざぎざ「櫛目」

変わるキッチン(第7回)~「する」

2014.10.31(Fri) 澁川 祐子
筆者プロフィール&コラム概要
筆者所有のすり鉢と、山椒の木でできたすりこ木。すりこ木の材は、櫛目を傷つけない適度な硬さのものが適しているとされ、山椒を第一に、柳や桑なども使われてきた

 蕎麦屋や和食店で、小さな「すり鉢」と「すりこ木」が出てくることがある。すり鉢のなかにはゴマやクルミなどの薬味が入っている。自分でお好みにすってくださいというわけだ。

 料理を待つ間、ゴリゴリとやる。最初は押しつぶすようにして砕き、ほどよく細かくなったら、ぐりぐりとすりこ木を回す。だんだんと油がにじんできて、ほのかな香りが漂う。すりこ木が快調に回り出したら、ずいぶん細かくなった証拠。そうこうしているうちに料理が運ばれてくる。料理が来るまでのちょっとしたアトラクションだ。

 「する」道具といえば、ふだんから家で使っているかどうかはさておき、多くの人はすり鉢とすりこ木を思い浮かべるのではないだろうか。「する」道具を調べていて、ことのほかすり鉢礼賛の記述が多いのに驚いた。

 たいていは「あまり使われなくなったけれど」といったような前置きがある。それから「でも」と逆説がきて、そのあとに「いろんな料理に使える」「すり鉢ですると風味がいい」とすり鉢のよさが強調され、「ひとつあると便利」と締め括られる。

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1974年、神奈川県生まれ。東京都立大学人文学部を卒業後、フリーのライターとして食や工芸・デザインを中心に、読むこと、食べること、暮らすことをテーマとしたインタビューやルポ、書評を執筆。『森正洋の言葉。デザインの言葉。』(ナガオカケンメイ監修、美術出版社)、『最高に美しいうつわ』(SML監修、エクスナレッジ)の取材構成ほか、近著に当連載をまとめた『ニッポン定番メニュー事始め』(彩流社)がある。


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