人間の寿命がまだ短いときに大きな効果を発揮した西洋医学だが、寿命が延びるとともにその効力が相対的に低下してきた。糖尿病などの生活習慣病や腰痛、膝痛など、西洋医学では根本的な治療が難しい疾病が増えてきているからだ。
そのような時代に入ってもなお、西洋医学一辺倒の医療体制を敷くのが日本。そして、医師を尊敬するのはいいが頼り切ってしまうため、いつまで経っても先へ進めない。
日本の医療改革が進まないのもそうした背景がある。医療費削減もかけ声だけで、メタボ健診など逆に医療費を増やしてしまっているという弊害まで生まれている。日本の医療は変われるのか。先週に引き続き、東京女子医大の川嶋朗准教授に聞いた。
人工透析が必要になって後悔しても後の祭り
問 今回は川嶋先生のご専門である腎臓病についてお聞きしたいと思います。腎臓病は糖尿病などの生活習慣病の増加によって増えているようですが、ここにも日本の医療制度の深刻な問題点が隠されているそうですね。
答 現在、人工透析を受けている人は日本全国に約30万人います。そして、その数は年間3万5000人ずつ増えている。その約40%の人が糖尿病の患者さんなのです。
糖尿病は万病の元と言われますが、コントロールがよければ人間の体に深刻な事態を引き起こすような病気ではありません。
しかし、糖尿病を放置しておくと、様々な合併症を誘発し、最悪の場合には死に至ってしまいます。
その1つが、糖尿病性腎症です。
ご存知のように腎臓は体の濾過器の役割を果たしています。体の中にたまった老廃物を濾過し、尿として体外へ排出しています。もし、その機能に問題が生じると、体の中に老廃物(尿毒素)や水分がたまり、尿毒症になって生命に危険を及ぼします。
腎臓は人間が生きるために極めて重要な臓器なのですが、糖尿病になって血液中の糖の濃度が高い状態が続くと、腎臓の中にある糸球体と呼ばれる血管の集合体に大きなダメージを与えてしまうのです。
その状態を放置すると、末期腎不全となって腎臓が機能しなくなってしまいます。そうなると老廃物を体外に排出できなくなってしまう。そこで人工透析が必要になるのです。
しかし、糖尿病は生活習慣病ですから、きちんと体をコントロールしていれば人工透析に頼って生きていかなければならないような状況には陥りません。これは本人の心がけの問題です。