10月21日、日本は国連総会第一委員会で、核兵器の非人道性と不使用を訴える共同声明に賛同した。過去3度、同様の共同声明が出されたが、日本が賛同したのはこれが初めてである。
日本は核の脅威に対しては米国の「核の傘」に依存している。他方、唯一の被爆国として、核廃絶は悲願と言える。これまで理想と現実の狭間で苦悩してきた。
核の傘の下にあるという認識が不足
今回の賛同には安倍晋三首相の強い意志があったという。菅義偉官房長官は「(核の)拡大抑止策を含む安全保障政策と両立する」と述べたが、日本周辺に3つの核武装国が存在する限り、「核の傘」は機能させなければならず、割り切れないものが残る。
米政府筋は、名指しは避けつつ「このような(共同声明の)努力は、イランや北朝鮮のような核不拡散体制への脅威から焦点をそらせつつ、核兵器全廃への非現実的な期待を高める」と批判的な見解を示した。
カーネギー国際平和財団の某研究員は「日本は『いかなる状況下でも核は使われない』とは言えまい。北朝鮮の核攻撃に対し、米国が日本に代わり核で報復することは、政策の選択肢であるからだ」とズバリ痛点を突いている。
北朝鮮は今年2月に実施した3回目の核実験では、最大の爆発力を記録し、事実上、核武装国となった。また昨年12月に発射したミサイルは、衛星の軌道投入に成功し、大陸間弾道ミサイルの基礎的能力を保有した。
核実験に対する国連安保理の制裁決議に対し、4月17日の労働新聞では「米国が核戦争の導火線に火を点ければ、直ちに侵略者らの本拠地に先制打撃権を行使する」と反発し、「日本も例外ではない」と公然と威嚇を実施した。
「核兵器は使用されない限り有効である」というパラドックスがある。核兵器はもはや、使用できない兵器であろう。だが、核の威嚇はいまだに有効である。
核の威嚇に対応するには、(1)核武装(2)同盟国の「核の傘」(3)ミサイル防衛(4)敵基地攻撃の4つの手段がある。これらの手段を多く持てば持つほど核抑止力は向上する。
安倍政権は年末の「防衛計画の大綱」見直しに向け、「敵基地攻撃能力」の保有を検討するとした。今回、国連で賛同に転じた動きと無関係ではないだろう。