(英エコノミスト誌 2013年11月2日号)

全世界において、労働は資本に対して劣勢に立たされつつある。

 中国における製造業の中核地域の真っ只中に位置する、深センの広大な工場では、25万人近い労働者が西側の市場に向けた電子機器を組み立てている。ここは、フォックスコンが運営する多くの生産施設の1つにすぎない。同社はアップルなどのブランド向けに製品の生産を行い、中国全土でほぼ150万人に達する労働者を雇用している。米国では、フォックスコンは安価な国外の労働力がもたらす経済的な脅威の象徴となっている。

 しかし、結局のところ、中国でも米国でも、労働者は共通の脅威に直面している。ここ数十年、労働者が経済成長から得られる所得は、かつてないほどに落ち込んでいるのだ。

賃上げにつながらない生産性向上、成長による利益は資本の所有者に

 国民所得における「労働分配率」は、1980年代以降、世界の大部分で下降を続けている(図参照)。

 主に先進国から成る経済協力開発機構(OECD)の統計では、2000年代に入り、全所得に占める労働の割合は62%にすぎず、66%を超えていた1990年代前半と比べて低くなっている。

 このような低下はあり得ないはずのものだ。経済学者は何十年にもわたり、労働と資本に流れる所得の比率は不変だと考えていた(景気循環による短期的な変動を除く)。

 ニコラス・カルドアは1957年に経済成長に関する6つの「定型化された事実」を定義したが、その1つとして、労働に流れる所得の比率はほぼ一定だという項目があった。だが現在、多くの経済学者は、果たしてこれが今でも当てはまるのかと疑問を抱いている。

 労働分配率の下落が示唆するのは、生産性の向上がもはや広範な賃上げにつながらないという状況だ。代わりに、成長による利益が資本の所有者に向かう割合がかつてないほど高まっている。

 賃金労働者だけを見ても、高所得者が残りの人々よりはるかに多くの利を得ている。1990年代以降、全体の労働分配率が落ち込んでいる中でも、最も所得の高い上位1%の労働者が稼ぐ金額が全所得に占める割合は上昇している。米国では、上位1%を除くと、1990年代前半から2000年代半ばにかけての労働分配率の下落幅は約4.5ポイントと、全体の値の2倍になる。