東南アジアの中で英語に堪能な国民を抱え、しかも人件費が極めて安いフィリピンは、英語の苦手な日本人にとって英語圏へビジネスを広げるうえでの貴重な窓口になるのではないか。今から4年前にそう思い立って日本からセブ島にやって来た企業家がいる。原洋介さん(42歳)である。

フィリピンの英語力を武器に世界に日本の中古車を売る

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順位 タイトル
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7 日銀が下した「真珠湾攻撃」の決断
8 悲劇を生んだ空白の130分
9 崖っぷちの中国共産党、日本への強硬姿勢崩せず
10 韓国株を直撃する「黒田バズーカ」
11 中国圧力外交が促した日台漁業取り決め署名
12 債務は成長の敵ではない
13 砂糖中毒のアメリカ
14 アジアにやっと追いつき、自らの矛盾に苦しむ欧州
15 歴史事実を歪曲する中国の「愛国主義教育」
16 アベノミクスの成長戦略を試す円安
17 日本の不動産株高騰に火をつけたアベノミクス
18 「護憲派」の論理の死角
19 人民解放軍暴走の不安が消えない理由
20 遂に始まった「ケイレツ切り」

 原さんは神戸出身。5年前に高校時代の同級生である千葉栄一さんと日本の中古車を海外へ輸出するベンチャーを立ち上げた。そして2009年にセブ島へ進出した。

 日本に100台単位の中古車を海外へ輸出する業者はいるが、個人に直接売るビジネスは手続きが煩雑なのでほとんどなかった。

 しかし、今はインターネットの時代、お客はネットでマーケティングすれば世界中から集まるのではないか。何しろ日本車の品質の高さは折り紙つきだ。あとは英語による実際の輸出入の手続きを代行すればいい。

 「まだ私が日本にいるとき、部下の知人にフィリピン人がいたんです。その人間が日本の中古車を売ってみたいと言うので試しに使ってみたんですよ。スカイプを使って営業方法を具体的に教え、1台売ったら1万円の手数料をあげるよ、と」

 「そしたら、あっと言う間に20台もの中古車の商談をまとめてしまった。輸出先はアフリカです。これはいけるかもしれないと思いました。だって英語のできる日本人を雇ったら最低でも月に35万円はかかるでしょう」

 そして2009年12月にセブ島で今の会社(JICC=Japan Intertrade Call Center Corporation)を設立、原さんは最高経営責任者(CEO)に。原さんを含めて日本人2人とフィリピン人16人で中古車の販売を始める。

 営業のできるしっかりしたフィリピン人を16人雇っても、英語の営業ができる日本人1人分にも満たない。日本でやるよりコストは圧倒的に安くなった。

 狙いはぴたりと当たる。半年もしないうちに事業は軌道に乗り、セブ島の中で最も環境整備されたITパークへと引っ越した。しかも将来の発展を見込んで一気に100人以上は収容できる大きなスペースを借りた。

 ITパークはその名の通りIT系の企業を誘致するために開発された一角で、街並みは米国のシリコンバレー、それもその中心地であるパロアルトを髣髴させる。

 ものすごい勢いで開発が進んでいるセブ島とはいえ、街にはフィリピンらしさがいっぱい。しかし、このITパーク内はやや人口密度が高い点を除けば、フィリピンにいることを忘れてしまうほどである。