当欄では何度か日本のお家芸であるクルマ業界に注目し、燃費や部品メーカーなど主要マスコミではほとんど扱われないテーマに触れてきた。今回は日本特有の仕組みである「ケイレツ」(系列)を扱ってみる。
世界的な潮流として、クルマ業界は車体や部品の共有化を通じてのコストダウン競争が熾烈になっているが、この流れがいよいよ日本でも本格化しそうな気配である。某メーカーを軸に、最新の動きを追う。今回の記事を読み解くキーワードは“ケイレツ切り”だ。
トップ同士の密会で商談が成立
本題に入る前に、ある大手企業2社のトップの動向を振り返ってみる。なお、情報源との約束により、個別の企業名は伏せることをあらかじめご承知おきいただきたい。
昨年来、某電気機器メーカーが保有する関西圏の研究開発施設を、某自動車メーカートップが頻繁に訪れていた。
訪問の目的は、このメーカーが製造する特殊な部品の調査と値段交渉。トップ自らが足を運び、部品の品質や精度をチェックしたという。一方、電気機器メーカー側からもトップが同施設に現れ、しばしば両者の密会が持たれたという。
自動車メーカー側の思惑は、ずばりコストカット。
電気機器メーカーが提供する特殊な部品が、極めて高い安全性を求められるクルマに適用可能か見極めることにあった。同時に、クルマ業界特有の「ケイレツ」内部から調達する場合と、この電気機器メーカーが提示する価格がどの程度違うかを見極める狙いもあった。
複数の関係者によれば、数回にわたるトップ同士の密会を経て商談は成立。乗用車1台当たり、約100程度に上る特殊な部品を自動車メーカーが調達することで合意したという。