中国では習近平体制が発足した。軍拡を加速して富国強兵に邁進するという見方が目立つ。技術開発力が弱いので新兵器開発には制約を抱えているとされるが、量的兵力は日本の3~11倍(海軍3倍、空軍6倍、陸軍11倍)で、日本が保有しない多種多様の核兵器を持つミサイル部隊も存在する。

 他方で、国内には多くの不満が充満している。尖閣諸島を自国領と主張してナショナリズムを高揚し、ガス抜きに活用することが危惧され、日本は難しい対応が求められる。

和諧社会からほど遠い中国

習近平新体制が発足、汚職対策に意欲 中国

中国の習近平国家主席と、李克強首相(右)〔AFPBB News

 2007年末、日本に帰化した石平氏は、文化大革命時代は「毛沢東の小戦士」として活動していたという。その後日本に留学し冷静に中国情勢を眺めることができるようになった石氏は、小戦士時代が「人騙しの洗脳教育」であったことを知り、「人生の中で最も嫌悪」するようになる。

 しかし、今でも「あの毛沢東時代の人騙しの洗脳教育が、そっくりそのまま中国で繰り返されている」(『私はなぜ「中国」を捨てたのか』p84)と弾劾する。

 胡錦濤が掲げた和諧社会は実現するどころか、貧富の拡大で益々住みにくい社会となり、国内での暴動(集団的抗議事件)は増大の一途である。

 1993年に起きた暴動は1万6000件であったが、2005年は8万7000件となり、12年は10万件をはるかに超えている(一般的な見方は18万件以上)と言われている。1日平均500件近くの暴動が起きているわけである。ちなみに中国政府は2007年を最後に発表していない。

 所得格差の程度を示すジニ係数*は、中国国家統計局によると北京オリンピックが開かれた2008年が最大で0.491であった。2012年は0.474とやや低下したが、社会不安の警戒ラインとされる0.4を超えた状態が続いていることには変わりない。

*ジニ係数は0から1までの数値で示され、1に近いほど格差が大きい。0は完全な平等状態を指す。騒乱が多発する危険が高まる警戒数値が0.4と言われている(編集部注)

 他方、中国人民銀行および西南財経大学の調べでは0.61(「産経新聞」3月15日付)でアフリカ並みと言われる。ちなみに易姓革命に繋がった明朝末期は0.62、清朝末期は0.58、国民党の統治期(20世紀初期)は0.53と見られ、いつ革命が起きてもおかしくない状況である。

 富裕層や官僚の子弟は富2代・官2代と呼ばれ、貧しい生活を続ける農民や農民工(都会への出稼ぎ農民)の子供は貧2代と呼ばれているそうである。

 富3代や官3代を作らない政権運営が党・政府の指導者には求められるが、指導者自身が自分の莫大な資産を隠匿したり、自国を信用しないかのように財産を外国に移管したり、子女を外国に留学させるなど、表の看板に背馳する行動をすることも頻繁である。最も清廉な政治家と見られてきた温家宝前首相が莫大な蓄財をしていることも発覚した。