「一日許容摂取量」の添加物を毎日食べるとどうなるのか

“嫌われ者”食品添加物を正しく理解する(前篇)

2012.04.20(Fri) 漆原 次郎
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堀江 ええ。無毒性量を人間にそのまま当てはめることはできません。そこで無毒性量の値を、「安全係数」という値で割り算します。

 安全係数には一般的に100を用います。つまり、動物実験による無毒性量の100分の1を見積もるわけです。このように100倍の厳しさを見積もっておけば、人間に有害な影響が出ることはないだろうという考え方によるものです。

 安全係数の「100」という数値の内訳は、人間と動物の種の違いが10、人間と人間の個体差の違いが10。この2つをかけて100としています。

 種の違いの10は、今までの科学の積み重ねにより出されたものです。個体差の違いの10は、例えばビール1杯でも酔う人と酔わない人がいるといった差を考慮したものです。

──すべての食品添加物に対して安全係数は100なのですか?

堀江 基本的にはそうですが、非常に毒性が強い物質である場合や、毒性についてのデータが不十分な場合など、不確実な部分が大きい物質に対しては、安全係数は1000などのもっと厳しい値になります。

 一方、ヒトでの試験データがある場合、種差を考慮する必要はないので、個体差のみ考慮して、安全係数は10などになります。

 こうして、無毒性量を安全係数で割って「一日許容摂取量」(ADI)という値を算出します。一日許容摂取量は、人が生涯、その物質を毎日摂取し続けたとしても、健康への影響がないと推定される1日あたりの摂取量のことです。

 例えば、アスパルテームという甘味料を見てみます。アスパルテームの一日許容摂取量は、体重1キログラムあたり40ミリグラム。体重50キロの人は、1日およそ2000ミリグラムを毎日摂り続けても大丈夫ということになります。

 一方、実際に日本人がどれだけアスパルテームを摂取しているかというと、厚生労働省の2002年度・2003年度の調査では、一日許容摂取量の0.29%でした。

 その他の食品添加物でも、たいてい一日摂取量は、一日許容摂取量の1%以下であり、多いものでも数%といったところに落ちついています。

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1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。


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