使用基準を「設定せず」とはどういうことか

──添加物メーカーが、新たに使いたい食品添加物を厚生労働省に申請しようとするとき、毒性データを誰がどう揃えるのですか?

堀江 毒性試験のデータなどを揃えるのは、申請者である添加物製造メーカー側です。メーカー自らが毒性試験をする必要があります。しかし、自社で毒性試験ができない場合は、他の機関に委託することになります。

 ただし、いいかげんな機関が動物実験をしても信頼されないでしょう。そこで、優良試験所規範(GLP)適合施設を持つ機関に依頼をすることになります。

──メーカーが新しく食品添加物を申請して認められる頻度は、実際どのくらいなのですか?

堀江 国際的に安全性が認められ、欧米などで汎用されている添加物(後篇で紹介)を除きますと、最近では数年間に1~2件といった頻度です。

 すでに使われている食品添加物と同じような効果であれば、すでに使われているものを使いなさい、となります。添加物メーカーは、これまでの食品添加物に比べて、安全性が高く、効果も大きいというデータを揃えなければなりません。

──最近、認められた食品添加物にはどのようなものがありますか?

堀江 最近のものでは「ネオテーム」があります。甘味料のアスパルテームに似たもので、大日本住友製薬と米国のニュートラスイートという企業が申請をし、2007年12月、厚生労働省に認可されました。

──ネオテームの使用基準を見てみると「設定せず」とあります。これはどういうことでしょう? 使用基準を設けないとまずいのでは?

堀江 ネオテームを砂糖の代わりにすべての食品に使っても、一日許容摂取量を超えるような摂取は考えられない、ということです。つまり、基準を作る必要がないと厚生労働省が評価したのです。

 また、ビタミンCのように極めて毒性が低い物質については、一日許容摂取量そのものが「特定せず」となっています。お茶などには酸化防止のためビタミンCが使われていますが、そこで使われる量より、レモン1個分の方がはるかに多い。ビタミンCには体への影響のリスクもほぼないことから、ADIを特定する必要がないと判断されているのです。 (後篇につづく)