数年前、東京・自由が丘にあるスイーツのテーマパーク「スイーツフォレスト」でモンブランの食べくらべをやったことがある。

 栗の旬から間もない秋の頃だったせいか、アイスや中華スイーツ専門の店を除くすべての店舗に、モンブランは置いてあった。少なくとも4個のモンブランがテーブルに結集していたと思う。

 フランス産のマロンペーストをあしらったもの、和栗のペーストに渋皮煮の栗をごろっと一粒載っけたもの。土台はスポンジケーキだったり、タルト生地だったり。中身も生クリームやカスタード、マロンクリーム。

 むろん組み合わせや配分はそれぞれ違う。こってりと甘いどっしり系から、栗の素朴な味わいを生かした甘さ控えめ系まで。どれも似たり寄ったりの味かと思いきや、意外に個性豊かで驚いた記憶がある。

 さらにはっきり覚えているのが、どれも茶色いモンブランだったことだ。

 かつてモンブランと言えば、あの栗きんとんみたいな黄色いペーストを渦巻き状にぐるぐるっと盛ったのが定番だった。だが、いつのまにか茶色いペースト、しかもぐるぐるじゃなくて一定方向に絞りだした均整のとれたものが目につくようになった。

 黄色いモンブランは、一体いつから茶色のモンブランに取って代わられたんだろうか。

元祖は本当に「白い山」だった

 モンブランはフランス語で、直訳すると「白い山」。フランスとイタリアの国境に位置するアルプス山脈の最高峰を指す。

 よくよく考えてみれば、「白い山」というネーミングは不可解だ。こんもりとマロンペーストを盛った形は、山に見えなくもない。だが、黄色いモンブランにしろ、茶色いモンブランにしろ、白と形容するには無理がある。

東京・青山のイタリア菓子専門店「ソルレヴァンテ」のモンテビアンコ(472円)。ココア風味のメレンゲ、マロンペーストの上にふわっとした生クリームが山型に盛られている。

 そう呼ばれたワケは、発祥までさかのぼると合点がいく。

 モンブランのルーツには諸説あるが、最も有力なのがアルプス山脈を望むフランスのサヴォワ地方やイタリアのピエモンテ州などで食べられていた郷土菓子という説だ。

 フランスで「モンブラン」、イタリアで「モンテビアンコ」と呼ばれるこの郷土菓子は、マロンペーストに、泡立てた生クリームを添えたもの。1900年に刊行されたプロスペール・モンタニエとプロスペール・サレの共著書『グラン・キュイジーヌ』には、マロンペーストをドーナツ状に絞りだし、さらにその窪みに泡立てた生クリームを絞ったお菓子が「モンブラン」の名で紹介されている。