「トランプ2.0」で中国の越境ECビジネスの不確実性が高まっている。写真:ロイター/アフロ

 2009年から始まり、今年で16回目となった中国の「独身の日(11月11日)」セール。今回は例年よりも前倒しの実施でセール期間がこれまでで最長となったが、あまり盛り上がることなく終わってしまった。というのは、10月下旬から中国国内でも米大統領選挙への関心が強まり、セールどころではなくなってしまったからだ。

 中国のECビジネスはここ数年拡大を続けてきたが、今、大きな転機を迎えようとしている。中国国内では大きな伸びが期待できない中、海外に活路を見いだす必要が生じているが、「トランプ2.0」でそのビジネスの不確実性が高まっているからだ。今回は中国のECビジネスが直面している課題と今、進められている取り組みについて紹介したい。

ECセール不要論が高まる中での2つの変化

 今年の独身の日セールは例年より10日前倒しの2024年10月14日からスタート。EC大手3社のアリババ、京東、PDD(ピンドゥドゥ)はもちろん、コンテンツEC(コンテンツの提供がEC販売につながる)の代表格である動画配信大手の「抖音(中国版TikTok)」と「快手」、口コミアプリの「小紅書(RED)」も相次ぎ参戦した。

 それにもかかわらず、コロナ禍以降、中国では独身の日などのセールで低調な販売状況が続いており、中国国内ではECセールに対して不要論が高まっている。

 それは、中国の消費者が「セールだから衝動的にたくさん買うのではなく、慎重な消費行動をとるようになっている」からだ。

 こうした状況を受け、中国のECビジネスは今、変わろうとしているが、それは今回の独身の日セールでも次の2つの動きに見て取れた。