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 変貌する中国市場における新たなビジネスチャンスとは?本連載は、年平均4.7%の成長率を維持し、さらなる成長の機会を獲得しようとする中国が描く「新発展」戦略や新たに生まれる巨大市場について、気鋭の研究者が徹底解説した2030年中国ビジネスの未来地図』(チョウ イーリン著/東洋経済新報社)から、内容の一部を抜粋・再編集。

 第2回は、消費のけん引役として注目を集める「下沈市場」について解説する。

<連載ラインアップ>
第1回 「下沈市場」「国潮・国貨」、2030年代の中国市場を見通す注目ワードとは?
■第2回 9.3億人超、全人口の66%を占める「下沈市場」に注目すべき3つの理由(本稿)
第3回 なぜ日系コンビニの弁当が伸び悩んだのか?「下沈市場」の特徴とは?
第4回 ファーウェイも実践、下沈市場を開拓するための「農村包囲都市」戦略とは?

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■消費をけん引する「下沈市場」

「下沈市場」に注目する3つの理由

 中国では今、3級都市以下の地方都市・農村地域を指す「下沈市場」が注目を集めています。経済発展が最も進んでいる1級都市、新1級都市と比べると、発展の後れをとっていた「下沈市場」は田舎のような存在ですが、実は巨大な人口を抱え、高い潜在成長力を秘めている地域です。

 繰り返しになりますが、「下沈(シャアチェン)」は3級都市以下の地方都市・農村地域に商品やサービスを浸透・普及させる意味合いで使われています。「下沈市場」が新たな有力市場になる大きな理由は、9億を超える人口規模、購買力の向上、デジタルの力による加速度的成長の3つです。それぞれについて詳しく説明します。

① 9億を超える人口規模
 まず、人口規模を見ると、1級都市、新1級都市および2級都市は全人口(2021年末時点14億1260万人)の約34%を占めるのに対して、「下沈市場」は全人口の約66%に相当する9億3200万人を擁します。

 なお、「下沈市場」は中国大陸の約95%の国土面積を占めており、広範に散在しているため、地域によって慣習や消費嗜好などが異なります。これは「下沈市場」の最大の特徴であり、「下沈市場」進出の難しいところでもあります。

②購買力の向上
 次に、購買力の向上を見てみましょう。

 かつて中国は14億人口の市場だと言われましたが、多くの企業は先進地域とも呼ばれる1級都市、新1級都市および2級都市の消費者を対象とした市場戦略に注力していました。「下沈市場」の人口規模がもたらす消費市場の可能性に魅力を感じながらも、後進地域は購買力が低いという見方が根強かったのです。

 確かに「下沈市場」はいわゆる中低所得層が多くいる地域であることは事実ですが、ここにきて状況は大きく変化しています。「下沈市場」の消費規模が拡大し、そこに住む人々の購買力も向上しているため、新たな消費市場になりつつあるのです。