変貌する中国市場における新たなビジネスチャンスとは?本連載は、年平均4.7%の成長率を維持し、さらなる成長の機会を獲得しようとする中国が描く「新発展」戦略や新たに生まれる巨大市場について、気鋭の研究者が徹底解説した『2030年中国ビジネスの未来地図』(チョウ イーリン著/東洋経済新報社)から、内容の一部を抜粋・再編集。
第4回は、通信機器メーカー大手のファーウェイがとった「農村包囲都市」戦略ほか、「下沈市場」を開拓した企業の成功例を紹介する。
<連載ラインアップ>
■第1回 「下沈市場」「国潮・国貨」、2030年代の中国市場を見通す注目ワードとは?
■第2回 9.3億人超、全人口の66%を占める「下沈市場」に注目すべき3つの理由
■第3回 なぜ日系コンビニの弁当が伸び悩んだのか?「下沈市場」の特徴とは?
■第4回 ファーウェイも実践、下沈市場を開拓するための「農村包囲都市」戦略とは?(本稿)
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■「下沈市場」 開拓で成功した事例
「下沈市場」 の勝者と呼ばれる企業
米中対立で通信機器メーカー大手ファーウェイの先端技術や研究開発能力ばかりが注目されていますが、同社が今の地位を築いたのには巧みな戦略がありました。それが、国外メーカーが軽視した農村市場を攻略してから、都市部の顧客開拓へ、発展途上国から先進国市場へという市場戦略です。
これはかつて中国共産党が「農村包囲都市(農村から都市を包囲する)」戦略で革命に勝利したことを彷彿とさせます。今はファーウェイだけでなく、この戦略をビジネスに展開する企業は増えています。
とりわけ「下沈市場」開拓に注力している企業は、「農村包囲都市」戦略を積極的に実践しています。PDDや、ショート動画配信大手の快手、茶飲料ブランドの「蜜雪氷城(ミシュエビンチェン/Mixue Bing Cheng)」など成功例が多くあります。
「下沈市場」の勝者と呼ばれ、農村ECの代表格である「匯通達(フィトンダ/Huitongda)」もその一例です。2010年に設立された同社は南京に本社を構え、「農民たちにより良い生活」を企業ミッションに掲げています。消費者向けではなく、ビジネス向けのプラットフォーマーとして、「下沈市場」のパパママ・ストア(零細小売店)や小型スーパー向けの商品・サービス提供を中心に成長しているのです。2021年9月末時点で中国21の省の農村地域において、16万超の会員店と、3億人の消費者ユーザーを擁し、2022年2月に香港上場を果たしました。
これらの成功例は、「下沈市場」に大きなビジネスチャンスが潜んでいることを証明しています。
ではこれらの企業が「下沈市場」で成功できた大きな要因はなんなのでしょうか。PDDの事例を中心に「下沈市場」進出の成功のヒントを解き明かします。