「北の快適工房」ブランドの健康食品や化粧品を開発、販売する北の達人コーポレーション。組織の機能不全に陥り業績悪化に見舞われるものの、組織風土改革によってV字回復を遂げる。1年で業績を13倍に押し上げたチーム改革は、一体どのように成し遂げられたのか。前編に続き、書籍『チームX(エックス) ── ストーリーで学ぶ1年で業績を13倍にしたチームのつくり方』(ダイヤモンド社)を著した北の達人コーポレーション代表取締役社長 木下勝寿氏に、組織改革の要諦を聞いた。(後編/全2回)
■【前編】北の達人・木下社長が語る、最悪状態「機能不全」組織を蘇らせた根本的解決策
■【後編】1年で業績13倍に、北の達人マーケティングチームを一枚岩にした「1つの用語」(今回)
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独自のKPIが「自ら率先して動く風土」の原動力に
──前編では、組織の機能不全を招いた「5つの企業組織病」についてお話しいただきました。さまざまな課題に直面しつつも試行錯誤の末、2022年から2023年の1年間でチームの業績を13倍にまで成長させています。具体的にはどのような取り組みをされたのでしょうか。
木下勝寿氏(以下敬称略) その頃は、社員数が急拡大した時期でした。20人くらいまでの組織であれば、社長である私が直接指示を出すことができますが、100~200人規模となるとそれは無理でしょう。そこで、私が直接マネジメントするのではなく、KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)を用いた組織マネジメントの手法を導入しました。
KPIを使った管理をする上で最も重要な点は、仕事の優先順位や今やるべきことを、社員一人ひとりが「自分で判断できる状態」をつくることです。KPIがない状況では、上司や指導役の先輩から「OK」と言われる広告を作ることが仕事の目的にすり替わる危険性があります。しかし、KPIを設定することで、日頃から「この数字が出ていればOK。出ていなければ改善が必要」ということを自ら判断できるようになります。そういった判断の積み重ねが、「一人ひとりが自ら動かない風土」を「自ら率先して動く風土」へと変える原動力になったのだと思います。
しかし、KPIは諸刃の剣です。シンプルでわかりやすい分、設定方法を誤ると、全体を見ずにその数字だけを追いかける「部分最適」が起きたり、「自分の仕事さえやれば良い」という利己的な行動を招いたりする恐れがあります。そのため、KPIは慎重に検討を行い、何度も修正を重ねました。
その中で思ったことは、KPIは「他社との比較」を通じて設定するものではなく、あくまでも「自社の価値観」に基づいて設定すべき、ということです。一つひとつの数字がメンバーにどのような印象を与え、それぞれの意識と行動をどう変えるのか、十分に見極めることが大切です。