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デジタイゼーション、デジタライゼーションを経てデジタル化の最終目標となるデジタルトランスフォーメーション(DX)。多くの企業にとって、そこへ到達するためのルート、各プロセスで求められる施策を把握できれば、より戦略的に、そして着実に変革を推し進められるはずだ。
本連載では、『世界のDXはどこまで進んでいるか』(新潮新書)の著者・雨宮寛二氏が、国内の先進企業の事例を中心に、時に海外の事例も交えながら、ビジネスのデジタル化とDXの最前線について解説する。第7回は、日立製作所が「Lumada(ルマーダ)」で目指す「顧客との協創」について解説する。
<連載ラインアップ>
■第1回 「やってみなはれ」、サントリーが挑むDXと新浪社長が目指す生成AIの活用とは
■第2回 ファストリ、デジタル化でサプライチェーンを“完全可視化”する本当の狙い
■第3回 AIとデータ活用で何を実現?リクルートが目指す新たなビジネスモデルの真価
■第4回 イオン、ライオン、楽天、先進企業が推進するデジタルを駆使した物流改革
■第5回 デジタルで顧客向けサービスを統合、MUFGが目指す「一人別提案」への道筋
■第6回 約3万人がデジタル人材として進化中、JR東日本のDX推進の中身とは?
■第7回 ChatGPTと独自のAIで開発、「話す機械」で日立製作所が目指す先は?(本稿)
■第8回 EV開発で先行するテスラ、トヨタは巻き返しを図れるか?(予定)
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サムスンのAIスマホが実現した“リアルタイム通訳”
近年、DXの動きは、既存事業者のデジタル化を中心に、ECでビジネスを展開する事業者によるAI化を含んだ事象として捉えられることが多くなりました。
どちらの事業者にしても、企業がデジタル化する対象は、主に「製品」「サービス」「業務」の3つで、これらに「自動化」「高機能化」「インテリジェント化」を施すことで新たなる価値が創出され、顧客や社会の課題が解決されています。
製品において、最近特に注目されているのが“オンデバイスAI”です。これは、端末に内蔵されたAIを意味し、端末内で高度なAI処理が行われることで、サービスの領域を広げたり深化させたりして顧客価値を高めたりしています。
クラウド上でAIにより学習やデータ解析を行うという従来の方法とは異なり、端末というローカル側でAIを組み込んで分析するという視点でこれを捉えれば、“エッジAI”の仕組みにも当てはまります。具体的には、端末に搭載した高性能の半導体で高速にデータを処理して回答することができるようになったことから、即時性と効率性の両面から価値を生み出すことが可能となりました。
オンデバイスAIは、スマホから自動車に至るまで既存の製品で実現されているだけでなく、ウエアラブル端末やロボットといったように、新たな端末にAIを主役にして組み込み価値を創出するという形態も増えてきました。
2024年に入り発売されたAIを搭載したスマホやテレビは、それぞれ、「AIスマホ」や「AIテレビ」と呼ばれ話題になっています。どちらの製品も、サムスン電子(サムスン)が牽引していますが、革新性や将来性の視座から特に注目されるのは、AIスマホです。
ただ、スマホにAIを搭載して新たな機能を作り出すことはこれまでも行われており、たとえば、iOS16では、AIを組み込んでカメラで撮影した写真の「画像切り抜き」機能の利用が可能になっています。
AIスマホでは、サムスンが、2024年4月に発売した旗艦モデルである「ギャラクシーS24シリーズ」に見られるように、生成AIを組み込んで、“リアルタイム通訳”を可能にしたデバイスが登場しています。
リアルタイム通訳の対応言語は、英語や中国語、スペイン語など13言語に上り、例えば、英語の話者に電話する際に、通話先には日本語による会話を英訳した音声が流れ、通話先の英語による返答は日本語に翻訳されて聞こえることになります。