キングジム代表取締役社長の木村美代子氏(撮影:宮崎訓幸)

 ラベルライターの「テプラ」や「キングファイル」など、オフィスワーカーにとってなじみ深い商品を数多く開発してきたキングジム。ペーパーレス化が進み、文具メーカーを取り巻く環境が大きく変わる中、どのような成長戦略を描くのか。取引先である文具通販のアスクルから移籍し、2024年9月に創業家以外から初の社長に就任した木村美代子氏に話を聞いた。

オフィス用途以外にも対象を広げる

──2022年にアスクルから移籍して取締役として就任される時、キングジムに対してどんな印象を持っていましたか。

木村美代子氏(以下、敬称略) キングジムとは、前職場のアスクルで商品を販売し始めた約30年前からのお付き合いでした。アスクルは当時の親会社だったプラスの文具を売るところからスタートしたのですが、キングジムのファイルが良いというお客さまからの声が非常に多かったため、商品を取り扱わせてほしいと当時の宮本彰社長(現会長)にお願いに行ったんです。

 キングジムは老舗企業として高い品質と信頼感があり、「テプラ」のようなユニークな商品も開発している良い企業だと思っていました。

「キングファイル」(写真提供:キングジム)
「テプラPRO SR-R980」(写真提供:キングジム)

──キングジムに入社後はいかがでしたか。

木村 外から見ていたときは、真面目過ぎて若干頭が固い人たちが多いかな、とも思っていましたが、入社してみるとユニークで会社に対する思い入れも強い社員がたくさんいると感じました。

 女性社員も多かったのですが、女性管理職比率は5%程度だったので、そこは意識して組織改革に取り組み、現在は13.8%(2025年3月時点)にまで上がっています。

──その他、会社の課題としてはどんなことがありましたか。

木村 当社にとって文具はもちろん大切な商品ですし、思い入れの強い社員も多いのですが、ペーパーレスの時代なので、そこにこだわりすぎると成長できません。従来の文具からいかに脱却して外に目を向けるかという点と、もっと独自性や機能性の高いものを作っていかなければいけないという点が課題だと思いました。

 そこで、以前はファイルやテプラ、デジタル文具も含めてオフィスを対象にした商品が中心だったのですが、病院や工場、飲食店など、対象範囲をさまざまな働く現場に広げようと新商品開発と新規ルートの開拓を行いました。今はそうした働く現場向けの商品が徐々に伸びています。