
2025年で創業120年を迎えたコクヨ。文具をはじめオフィス家具、オフィス通販、インテリア販売などを手がけ、海外へも展開しているが、実はここ20年ほどの間、売上は約3000億円で足踏み状態が続いていた。2015年に5代目の黒田英邦(ひでくに)氏が社長に就任して以来9年間、さまざまな改革を進め、2023年からは再び成長軌道を描き始めた。それぞれの改革の取り組みと、それをリードするキーパーソンに取材し、老舗企業コクヨに今どのような変化が起きているのかを解き明かす。
今回は、成長を牽引する海外展開におけるコクヨ独自のマーケティング手法について、グローバルステーショナリー事業本部グローバルリージョン統括本部マーケティング戦略推進本部本部長の本村香代子氏に聞いた。
文具の売上の4割をグローバルに
コクヨは2024年5月にマレーシアの首都クアラルンプール近郊の商業施設に文具の直営店を出店した。海外での直営店出店は中国に続く2カ国目で、商品の魅力を発信するのと同時にニーズを把握するのが目的だ。
日本国内では少子化が進み市場が収縮していくのに対し、成長が見込まれる東南アジアなどの市場を開拓し、2027年12月期には文具の売上のうち海外シェアを4割にすることを目指している。
2004年にコクヨに入社したグローバルステーショナリー事業本部グローバルリージョン統括本部マーケティング戦略推進本部本部長の本村香代子氏は、子どもの頃から大の文具好きだった。お小遣いをもらってはワクワクしながら学校の近くの文具店に向かった。今も新商品のリサーチを兼ねて文具店に行くが、それは仕事という以前に楽しみでもある。
「文具って可愛さと実用を備えたものなんです。一つ一つは小さくて安いものなのに、それを使うことで人生が少しだけ豊かになると感じる、そんな力を持っています。新しいノートを開いて、ピッと折り目をつけるとき、この一冊分また頑張ろう!と思う瞬間が一番好きです」(本村氏)
文具のことを語り出すと止まらない、根っからの「文具女子」だ。