考えてみれば、企業とはすごい組織です。生まれも育ちも違う人たちが集っています。一昔前は日本人というくくりがありましたが、最近は人種も多様です。そうした多様な人たちが働くわけですから、共通の軸や北極星が必要になります。

 多様な人たちが働いているわけですから、想定外のことも起きます。そうした場合に立ち戻る原点のようなものも必要になります。その原点であり、北極星になるのが経営理念です。

 ですから、経営理念なくして企業経営は成り立たないのです。朝礼などで、全員で経営理念を唱和する会社も少なくありません(最近は少なくなってきたようですが)。

 ただ、どうでしょうか。経営理念の重要性をみなさんも認識はしているでしょうが、実際に経営理念に基づいて毎日働いているでしょうか。

 自分が働いている企業の経営理念をそらんじることができても、経営理念の意味を深く考え、日々の仕事の中で経営理念を実践できているか? と問われたら答えに窮する人が多いのではないでしょうか。

「そうは言われても、経営理念を意識して働くなんて無理があるでしょ」「そんなこと全く想像できないんだけど」という声が聞こえてきそうですが、これはかなり問題があります。

 何にベクトルを合わせるのかわからないまま、わけもわからずにただただ働いていては、個人としても組織としても成長がありません。目的地を定めず、航海図も持たないまま港を出るようなものです。

 とはいえ、みなさんが悪いわけではありません。

 まず、経営理念は非常に重要ですが、ただ読むだけでは理解できない場合もあります。その背景やどういった思いが込められているかまで踏み込まなければ意味がありませんが、なかなかそうした機会に恵まれない組織もあるでしょう。

 また、そこまで踏み込んでも、日常の業務に落とし込み、「自分事化」するのは簡単ではありません。言葉は悪いですが、経営理念は経営陣を除けば、多くの働く人にとって少し遠い存在なのです。「神棚に祀られている」という表現を使うクライアントもいました。

 会社の根っこの大切な部分なのはわかっていても、それを理解したところで、「自分は日々、何をすればよいのか、どこを向いて働けばいいのか」が見えてきません。経営理念を「自分事化」するための「仕組み」が必要なのですが、多くの会社ではこの「仕組み」がありません

 これが経営理念が形骸化しがちな理由ですが、ユニクロには理念を実践につなげて生産性を高める「仕組み」があります。