■ プログラム 3

 3つ目のプログラムでは、「アイカンパニーのビジョン策定」を行う。ここまでのプログラムで把握した自己特性を踏まえ、これから目指すビジョンを策定してもらう。

 研修グループ内でお互いにアドバイスをし合いながら、自分だけでは決められない高い基準でビジョンを策定する。研修後は、策定したビジョンをそれぞれの職場に持ち帰り、同僚や上司とともに自身のキャリアを深めていく。

 これは、「責任ある仕事を任せる」ための心構えの機会になる。高い基準でビジョンを策定してもらうためには、今の仕事にとどまらないスキルや、今の関係性にとどまらない役割も想起してもらわざるを得ない。今の延長線上にない自分を描いてもらうことで、責任ある仕事を任せるための準備ができるのである。

取り組みのポイント

 同社の取り組みにおいて特筆すべき点は、同一の人事担当者が、採用から育成まで「一貫性」を持って取り組みを行っていることである。従来、同社では採用担当と研修担当は別にしていたが、2021年から兼務体制に変更した。

 その結果、採用段階から「自分が採用に携わった新入社員が、この後、どのように成長していくのだろう?」と気にするようになり、「この会社を通して豊かな人生を送ってもらいたい」という思いが強まったと言う。

 人事担当者のこうした姿勢は、研修に携わる現場の上司にも伝わるものだ。上司からの手紙を見ても、「この会社で成長してもらいたい」という思いを込めて書かれていることがよく分かる。若手社員の成長に対して、人事と現場が一丸となってコミットできている好事例だといえるだろう。

取り組みの成果

 アイカンパニー研修は、講義だけでなく、対話を重視した研修だからこそ、受講者同士で多くの気付きが得られ、内省を深めることができた。受講した若手社員は、部署や業務特性にかかわらず社会人として不可欠な考え方や共通のスタンスを身に付け、成長の土台をつくることができてきている。

 4〜5年次で控える部署異動という環境変化に負けず、自身のキャリアを切り開いてくれるだろうという手応えが得られた研修となった。

<連載ラインアップ>
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第2回 「正解探し」から「正解創り」へ、Z世代のキャリアづくりに役立つマインドセットとは?
第3回 早期離職がもたらす「6つの弊害」と若手社員の退職を防ぐ「We感覚」とは?
第4回 新入社員の「突然の離職」を防ぐためのマネジメントのポイントとは?
第5回 アサヒ飲料が導入した「2年目リフレクション研修」、その狙いと内容とは?
■第6回 鹿島建設が入社3~5年目に実施した「アイカンパニー研修」とは?(本稿)


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