これは、前述の「スキルの棚卸作業」である。自分自身を1つの価値創出体とみなすアイカンパニーの概念を用いて、自分を取り巻くステークホルダーとの関係性の中で培われてきた自分自身のスキルや、自分が置かれている現状を俯瞰的に見定める作業である。

 One-pattern 引力に引っ張られやすい状況において、これまでのアイカンパニーとしての社史を振り返ることで、今ある自分というものが当たり前であると思わせない働きかけが重要なのだ。

■ プログラム 2

 2つ目のプログラムでは「現状のアイカンパニー理解」を行う。ポイントは、定量情報と定性情報の両側面から、自身の状況を相対的に捉えることだ。

 このプログラムで活用するのが「360度サーベイ」である。研修前に、仕事への自分の姿勢やスキルなどについて、上司や同僚から5段階で評価してもらう。

 このサーベイの結果に向き合うことで、自身が発揮している組織人格としての「役割演技力」を定量的に把握することができる。さらに、研修グループにおいて相互にアドバイスをし合うことで、自分自身の価値観や特性を言語化していく。

 360度サーベイに加え、「上司からの手紙」というコンテンツもある。普段から、若手社員を最も見ている上司に「手紙」を書いてもらい、それを研修時に渡す。日頃は、業務の遂行状況の確認や支援など、短期目線でのコミュニケーションが多くなりやすいからこそ、上司からの手紙では、本人の長期的な成長を期待する言葉を書いてもらう。

 2つ目のプログラムの取り組みに共通しているのは、他者からの期待に触れることである。

 これはまさに「評価を客観視させる」活動に通じる。この時期になると、仕事に対する慣れからくる慢心がある。

 日々の上司・部下の関係性からのフィードバックではそこまで響かない言葉であっても、360度サーベイのように多くの関係者から、定量的にフィードバックを受けると、客観的に自分自身を見つめなおさざるを得ない。

 そして手紙のように、じっくりとメンバーのことを考えて書く場合は、組織人格としての役割演技に対する指摘ではなく、そのメンバーのキャリアを踏まえて全人格的にフィードバックすることが自然と求められる。上司としてもそのメンバーを見つめなおす良い機会になるであろう。