コロナによる営業停止期間中、オリエンタルランドのキャッシュフローはもちろん急速に悪化しました。2020年3月31日から6月30日の3カ月間に現金及び預金が831億円減少していました。
それでも、前述のように財務体質を盤石にしてきたおかげで、2020年6月30日時点で1781億円の現預金が残っていました。さらに非常事態に備えた資金確保の手を打っており(後述)、アトラクション投資を継続することができました。
また、オリエンタルランドはアトラクションのみではなく、パレードやショーに多額の投資をしています。2002年以降でも総額400億円以上の投資をしています。
パレードやショーなど目の前で展開される「その場限り」のライブイベントは、大人にも子供にも大きな感動を与えます。TDRのパレードやショーは、最新技術が導入され、ライブイベントとして高品質で、多くの人に「また観たい」と思わせます。
オリエンタルランドの有価証券報告書でもイベントは集客効果が高いこと、またアナリストの見解としても高頻度で来園するコアファンの来園目的の1つがショーであることが説明されています。
東京ディズニーランドのパレードは35~45分間、600~900mの距離を移動しながら公演します。東京ディズニーシーの場合は、海上ショーがメインであり、10~30分間です。ホテルやレストランからもショーを見ることができます。
新しい試みとして、「ジャンボリミッキー!レッツ・ダンス!」は、ゲストがキャラクターと一緒にパフォーマンスするインタラクティブなショーとして人気を博しました。このようなショーはポジティブな思い出をもたらす没入体験となり、再来園の動機付けの1つとして働いています。
また、新しいショーの開始は多くのメディアに取り上げられることもあり、リピーター集客に効果的です。東京ディズニーランド開園時にマーケティンググループに所属していた渡邊喜一郎氏が執筆した『ディズニー こころをつかむ9つの秘密』には、オリエンタルランドの広報対応の工夫が記載されており、「継続的にメディアに出続けること」を目標に掲げ、メディア露出度をコントロールしているということです。
イベントというトリガーで大きくマスコミに取り上げられた時期の後は露出を控えるようにし、顧客を飽きさせない仕組みを作っていたということです。
<連載ラインアップ>
■第1回 ユニ・チャームは「成熟期」を迎えながら、なぜ高PBRを維持できるのか?
■第2回 不織布・吸収体に経営資源を集中、ユニ・チャームの高収益を支える「本業多角化、専業国際化」とは?
■第3回 新興市場がユニ・チャームの成長を牽引、海外展開を成功に導く「勝ちパターン」とは?
■第4回 年間入園者数が3000万人を突破、東京ディズニーリゾートはなぜ驚異的なリピート率を維持できるのか?(本稿)
■第5回 「待ち時間を減らす」東京ディズニーリゾートの“客単価”を引き上げたオリエンタルランドの方針転換とは?(11月14日公開)
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