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 日本企業のPBR(株価純資産倍率)の低さが、近年取り沙汰されている。PBRは証券市場における株主からの評価を表す指標と言えるが、東証プライム上場企業のうち約4割がPBR1倍を割り込んでいるのが実情だ。一方、高PBRを実現する企業は、いかにして持続的な成長を維持しているのか。本連載では『ビジネススクール企業分析 ゼロからわかる価値創造の戦略と財務』(西山茂編著/日経BP)から、内容の一部を抜粋・再編集。高PBR企業が持つ経営力の秘密に迫る。

 第3回は、ユニ・チャームの海外戦略について見ていく(西山茂・石地由賀著)。インドやアフリカ、南米などの新興市場において次々と消費者の心をつかむ同社の「海外展開の勝ちパターン」とは?

<連載ラインアップ>
第1回 ユニ・チャームは「成熟期」を迎えながら、なぜ高PBRを維持できるのか?
第2回 不織布・吸収体に経営資源を集中、ユニ・チャームの高収益を支える「本業多角化、専業国際化」とは?
■第3回 新興市場がユニ・チャームの成長を牽引、海外展開を成功に導く「勝ちパターン」とは?(本稿)
■第4回 年間入園者数が3000万人を突破、東京ディズニーリゾートはなぜ驚異的なリピート率を維持できるのか?(11月7日公開)
■第5回 「待ち時間を減らす」東京ディズニーリゾートの“客単価”を引き上げたオリエンタルランドの方針転換とは?(11月14日公開)

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高付加価値化のポイント①
所得が上昇する国々への展開で価格競争を回避

 ユニ・チャームの成長は、海外事業が牽引しています。2023年12月期には売上高の約66%を海外事業が占めています。海外事業比率は年々増加傾向にあります(下図)。 

 なかでも、アジア主要国(中国、インド、インドネシア、タイ、ベトナム)は、日本を上回る非常に高い成長を実現している地域です。これらの国々では、経済成長に伴う所得上昇により、高付加価値化による単価の上昇、普及率上昇による紙おむつ・生理用品などの使用枚数の増加が、中期的にも十分に見込めると言われています。

 ユニ・チャームは、中国市場への依存度が高すぎず、国・地域に極端な偏りが小さい点も特徴的であると言えます。かつては中国での販売額が大きかったものの、中国市場は数多くの現地メーカーの参入や価格競争の激しさから成長が見込みにくいとして、中国依存からの脱却を早くから進めていました。

 一方で、1人当たり国内総生産(GDP)が伸び、今後の成長を見込めるインドやアフリカ、南米などの新興市場を強化してきています。

高付加価値化のポイント②
海外展開における勝ちパターン

 アジアなどの経済成長は市場開拓のチャンスですが、海外展開を成功させるのは簡単ではありません。世界の幅広い地域でユニ・チャーム製品が生活者から高い評価を得ている背景には、「勝ちパターン」があると同社は言います。

 ユニ・チャームは、海外展開に当たり、国内のベテラン人材、エースの人材を派遣し、国内で成功したビジネスモデルの水平展開を行っています。「ユニ・チャームウェイ」を体現している本社のエース人材を現地のリーダーとして送り、ユニ・チャームの考え方や勝ちパターンの移植を任せながら、現地への権限移譲を進め、スピード感を持ったマーケティング活動や製品開発に取り組める体制を整えています。