日本企業のPBR(株価純資産倍率)の低さが、近年取り沙汰されている。PBRは証券市場における株主からの評価を表す指標と言えるが、東証プライム上場企業のうち約4割がPBR1倍を割り込んでいるのが実情だ。一方、高PBRを実現する企業は、いかにして持続的な成長を維持しているのか。本連載では『ビジネススクール企業分析 ゼロからわかる価値創造の戦略と財務』(西山茂編著/日経BP)から、内容の一部を抜粋・再編集。高PBR企業が持つ経営力の秘密に迫る。
第3回は、ユニ・チャームの海外戦略について見ていく(西山茂・石地由賀著)。インドやアフリカ、南米などの新興市場において次々と消費者の心をつかむ同社の「海外展開の勝ちパターン」とは?
<連載ラインアップ>
■第1回 ユニ・チャームは「成熟期」を迎えながら、なぜ高PBRを維持できるのか?
■第2回 不織布・吸収体に経営資源を集中、ユニ・チャームの高収益を支える「本業多角化、専業国際化」とは?
■第3回 新興市場がユニ・チャームの成長を牽引、海外展開を成功に導く「勝ちパターン」とは?(本稿)
■第4回 年間入園者数が3000万人を突破、東京ディズニーリゾートはなぜ驚異的なリピート率を維持できるのか?
■第5回 「待ち時間を減らす」東京ディズニーリゾートの“客単価”を引き上げたオリエンタルランドの方針転換とは?
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高付加価値化のポイント①
所得が上昇する国々への展開で価格競争を回避
ユニ・チャームの成長は、海外事業が牽引しています。2023年12月期には売上高の約66%を海外事業が占めています。海外事業比率は年々増加傾向にあります(下図)。
高付加価値化のポイント②
海外展開における勝ちパターン
アジアなどの経済成長は市場開拓のチャンスですが、海外展開を成功させるのは簡単ではありません。世界の幅広い地域でユニ・チャーム製品が生活者から高い評価を得ている背景には、「勝ちパターン」があると同社は言います。
ユニ・チャームは、海外展開に当たり、国内のベテラン人材、エースの人材を派遣し、国内で成功したビジネスモデルの水平展開を行っています。「ユニ・チャームウェイ」を体現している本社のエース人材を現地のリーダーとして送り、ユニ・チャームの考え方や勝ちパターンの移植を任せながら、現地への権限移譲を進め、スピード感を持ったマーケティング活動や製品開発に取り組める体制を整えています。