「成熟期」に入っているのに成長を持続

 実はこの3社はいずれも、以下の2つの理由から「成熟期」にある企業とも言えます。

 1つ目の理由は商品のコモディティ化です。3社が扱っている製品は、いわゆる「コモディティ化」しやすい商品です。

 コモディティとは「一般商品」「日用品」という意味ですが、経営学での用語としては、「メーカー間の差別化特性がなくなり、同質的になるため、主に価格あるいは量を判断基準に売買が行われるようになること」というような意味で用いられています。つまり、商品の付加価値で差別化することが難しくなり、低価格競争に陥りがちになるということです。

 ユニ・チャームの紙おむつのような商品は、コモディティに該当するものであり、それを主力商品にする企業は「成熟期」に入っていくと考えられます。同様に、花王やライオンも、主力製品やブランドはそれぞれ異なりますが、コモディティに該当する日用品を製造販売しており、企業のステージとしては「成熟期」にあると言えます。

 2つ目の理由は、キャッシュフローの特徴です。3社のキャッシュフローは下の図のようになっています。

 一部の期では例外もありますが、キャッシュフローを「プラス」と「マイナス」で大まかに分類すると、この3社はほぼ同じタイプであることがわかります。つまり、営業キャッシュフローがプラス、投資キャッシュフローがマイナス、財務キャッシュフローがマイナス、そしてフリーキャッシュフローはプラスです。

 キャッシュフローがこのタイプになっている企業は「成熟期」であると言われます(以下のコラム参照)。

■ キャッシュフローと企業ステージ

 キャッシュフローと企業ステージには関係があるとされています。

 営業キャッシュフローは、その会社の本業でどれだけキャッシュを稼いだかを示しています。通常はプラスになっている必要があります。

 投資キャッシュフローは、固定資産や投資有価証券の取得・売却による収支を示しています。会社がどれほど経営資源への投資を行ったかを示しています。

 財務キャッシュフローは、会社の財務活動、つまり、借入などの資金調達やその返済、配当金などの支払いによる収支を示しています。

 フリーキャッシュフローとは、通常、営業キャッシュフローと投資キャッシュフローの合計として計算されます。本書でもそのように計算して記載しています。このフリーキャッシュフローは、企業が事業活動によって一定期間の中で生み出している正味のキャッシュフローであり、本業の稼ぎ出す力を表しているとも言えます。フリーキャッシュフローは、企業価値算定で重要視される指標であり、その増加は企業価値向上に直結します。