社名から「印刷」の二文字を外し、大規模な事業ポートフォリオ変革を進めるTOPPANホールディングス(以下、TOPPAN)。この事業変革に連動して、同社は人事領域でもさまざまな施策を進めている。その一つが、同社が成長分野に位置付けるDX事業「Erhoeht-X(エルヘートクロス)」の増員だ。従事者を2025年までに6000人へ増やす計画を立てており、すでに5000人を超えた。併せて全社の従業員が前向きに業務に取り組むマインドの醸成も目指すという。同社 副社長執行役員 CHROの大久保伸一氏にその中身について聞いた。
成長事業への最適な“人”のシフトをどう進めるか
――TOPPANでは、DX事業「Erhoeht-X」の従事者を6000人に増やす計画を進めています。6000人という規模に設定した理由はどこにありますか。
大久保伸一氏(以下敬称略) 当社は中期経営計画で事業ポートフォリオの変革を経営課題の一つに設定しており、これから拡大を目指す「重点事業・成長事業」としてDXやSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)を定めています。この変革を達成するため、人事面では「事業拡大に必要な人財の確保」が大きなテーマになります。
当社のDX事業の中核を担うのが「Erhoeht-X」です。提供するサービスは多岐にわたっており、必要になる人財やスキルも幅広くなります。詳細は省きますが、「マーケティングDX」「ハイブリッドBPO」「セキュアビジネス」「流通・製造DX」「デジタルコンテンツ」といったカテゴリーでサービスがあるのです。
Erhoeht-Xを成長させるには、これら幅広いカテゴリーの担い手を計画的に育成・確保することが欠かせません。こうした点から6000人という規模を設定しています。
――計画達成に向けて何をしているのでしょうか。
大久保 グループ内の人財に対するアプローチと外部の人財に対するアプローチの両方を行っています。まずグループ内の人財については「デジタル教育の拡充」と、他の既存事業から成長事業に人財を配置転換する「最適な人財シフト」を進めています。
デジタル教育の拡充については、AWS認定資格の取得向け講座を導入し、すでに資格取得者は2000人を超えました。基礎的なクラウドの知識習得と資格習得を目的にしており、営業・企画・技術部門などさまざまな部門の従業員が受講しています。
これ以外に、データサイエンティスト検定やG検定(※ジェネラリスト検定:AI・ディープラーニングの活用リテラシー習得のための検定試験)の取得講座も導入しました。2つの資格取得者は合わせて300名を超えています。その他、「Aidemy」や「Udemy」といった教育サービスを提供するなど、さまざまな施策を打ってきました。
こうしたデジタル教育の拡充に力を入れつつ、先述の「最適な人財シフト」も同時に進めています。その一つとして、今期から「ジョブチャレンジ制度」を開始しました。重点事業・成長事業について50程度の社内ポジションを公募し、従業員自ら手を挙げて異動してもらう常設型の公募制度です。主体的な異動によって従業員の成長意欲を促しつつ、当社の事業ポートフォリオ変革の実現と掛け合わせる仕組みです。
ジョブチャレンジ制度はまだ始まったばかりで、今まさに公募中です(取材時時点)。ただし、この段階ですでに大きな反響を感じています。開始初日の募集サイトへのアクセスは2000名を超え、人事部門にも制度に関する問い合わせが多数寄せられました。新たなチャレンジを求める人財が主体的に重点事業・成長事業に挑戦する動きが表れています。