アサヒグループジャパン 執行役員 DX統括部 部長の山川 知一氏

 レガシーシステムに起因する多大な経済的損失が生じる──経済産業省が2018年に警鐘を鳴らした「2025年の崖」が近づいている。メーカー系を中心にシステム刷新が重要な課題となる中で、ビジネス変革に向けてレガシーシステムのモダナイズ(Modernize:現代化)に挑むアサヒグループの取り組みは、貴重な事例となるのではないか。アサヒグループジャパンDX統括部部長山川知一氏が語る、DX戦略で重要な位置を占めた「モダナイズ活動」の詳細とは──。

※本稿は、Japan Innovation Review 主催の「第21回DXフォーラム」における「全社で進めるアサヒグループDX戦略「Strategy2030」/山川知一氏」(2024年6月に配信)をもとに制作しています。

アサヒ流DX戦略「DX Strategy 2030」とモダナイズ活動

 日本、欧州、オセアニア、東南アジアを核としたグローバルマネジメント体制を敷くアサヒグループホールディングス。売り上げ、従業員数ともにグループの半分を占めるアサヒグループジャパンは、日本の事業統括拠点として2021年9月に設立された。DX統括部は、日本事業全体のIT化・デジタル化の責任部署だ。

 酒類、飲料類事業などを展開するアサヒグループは環境変化の影響を受けやすい。過去には業界の縮小、地政学上のリスクなどがあり、これからも少子高齢化、健康志向が加速する。そのような中で、DX統括部を中心に進めてきたのが、2030年をターゲットとするDX戦略、「DX Strategy 2030」だ(下図)。

 このDX戦略を通じてアサヒグループは、プロセス・組織・ビジネス領域でのイノベーション創出を通じたビジネス変革を目指している。そして、その実現のために重要な位置を占めるのが、俊敏かつ柔軟なシステム基盤へ移行するための継続的な活動である「モダナイズ活動」だ。

 山川氏は「モダナイズにおいて、『継続的な活動である』という点は非常に重要です」と語り、現在も進行中のモダナイズ活動における「以前の姿(Before)」と、「目指す姿(After)」を例示した(下図)。

 この図にあるように、限界まで使い続けてきた既存のシステム環境を、最新のクラウドやサービスを組み合わせて容易に変化させられる環境に刷新することが、まず大きな課題となる。

「持続的変化を可能にするビジネス環境を整えるためには、その構造、ITアーキテクチャを意識することが重要になります」と山川氏は言う。DX戦略について語った講演の中でも、レガシーシステムのモダナイズに焦点を当てながら、その骨子をお届けする。