「営業は断られてから始まる」と言われる。だが、話術だけで成約に導けるほど甘くはなく、1度成功したアプローチが2度通用する保証もない。「買う・買わない」の決定権を相手が握る中、営業担当にできることは何か、すべきことは何なのか? 本連載では、日本一の営業成績を認められ、初めて地方ボトラーから日本コカ・コーラへの出向を果たした山岡彰彦氏の『コカ・コーラを日本一売った男の学びの営業日誌』(山岡彰彦著/講談社+α新書)から、内容の一部を抜粋・再編集。顧客視点や組織力の大切さに気付いていく学びの足跡をたどる。
第2回は、競合と密な関係にある客にどうアプローチして成約に至ったのか、その舞台裏にスポットを当てる。
<連載ラインアップ>
■第1回 「コカ・コーラを日本一売った男」が、上司のひと言で気づいた新規開拓のコツとは?
■第2回 持てる資産を全て生かせ! 日本コカ・コーラのアメリカ人副社長から学んだ「組織営業」の極意とは?(本稿)
■第3回 日本コカ・コーラのセールスコンテストで日本一をとった男が、「社内営業」の大切さを知った“長老”の苦言とは
■第4回 アイデアは10分で出す、日本コカ・コーラの上司から学んだ仕事をスピーディに進めるための原則とは?
■第5回 日本コカ・コーラで学んだ、仕事の成否を大きく左右する「6つのステップ」とは?
■第6回 組織の機能を使い切るには? 四国コカ・コーラ ボトリングで気付いたシンプルな「組織営業」の基本
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常識を超える非常識なやり方
多くの人でにぎわうパチンコ店を始めとする大型のアミューズメントは飲料メーカーにとって大きな魅力を持っています。そのためすべてのお店がどこか特定のメーカーと結びついており、なかなか新規の取引先が入る余地はありません。
パシフィックグループもそんなチェーンの1つです。競合会社との関係が強く、私たちはアポさえ取ることができません。同社のグループ企業である焼肉チェーンが最近やっと取引をしてくれるようになりましたが、本丸ともいえるパチンコ店とは商談のきっかけさえつかめない状況が続いていました。
パチンコ店といえば自販機設置が定石ですが、すでに競合が強固な基盤を築いています。ならば他の方法はないものか。「まず、相手の都合から考えること」「新規開拓はいままでの延長線上でものを考えないこと」という小林部長の言葉を反芻(はんすう)します。
そこでまず焼肉チェーンの村山部長にパチンコ店の困りごとはどんなことかを伺うことにしました。村山部長はアミューズメント部門にも顔が利き、最近郊外にオープンしたパチンコの旗艦店にも彼の部門からコーヒーサービスの施設が設けられています。
私たちはそこでの直接取引を提案できる立場ではありませんが、なんとか店長に取り次いでくれることとなりました。
何事も一足飛びにはいきません。まずは挨拶を済ませ、お話を伺うところからスタートです。パチンコ店に入ったことがない私には、提案の糸口すらつかめません。それでも店長の話を通して少しずつ見えてくるものもあります。
お店としてはお客さんに少しでも長くパチンコ台に座ってゲームをして欲しいのですが、食事や飲み物を買いに離席するとその時間がロスになるということです。パチンコを打ちに来てもらっているのでもっともな話です。
では私たち飲料メーカーに何ができるのか、すぐに妙案は浮かびません。自販機では簡便に飲み物を提供することができますが、それでも一旦はパチンコ台の前から離席して、設置しているところまで買いに行かなければなりません。
結局、その日は店長からお話を伺うだけでしたが、お会いできただけでもまずは一歩進んだのでよしとします。
営業所に帰って何かできないかと考えます。