そういえば店内にはコーヒーサービスの施設もあり、スタッフも常駐している。ならばそこに機材を置いて飲料を提供してもらったらどうだろう。それならお客さんの離席を抑えることができるし、サービス向上にもつながる。

 都合の良い話ですが、お客さんにとっても、先方にとっても悪い話ではありません。コーヒーサービスの領域なら既存の自販機取引のところに割り込む訳ではありません。これはいけそうだと思い、早速村山部長に提案です。

 数日後、村山部長から電話です。

「面白い話だと思うけど、部門をまたがる、いままでにない話なので上の者同士で話をしたい。しかるべき人を連れてきてくれないか。うちは私より上も出てくることになりそうだが…」

 願ってもない話ですがこれを外すと後がない。そんなニュアンスが電話口から窺えます。上の人、相手は部長以上も来る。どういった人を連れていけばいいのだろうか。妙案は浮かびません。

 そんな時に以前、挨拶をさせてもらった日本コカ・コーラ社のシニアマネージャーの藤野さんとその上司のアメリカ人副社長、グレッグさんを思い出します。

 藤野さんは、私がフードサービスに異動した際、研修講師として来てくれたことで面識を得ました。営業担当者の全国大会でもお会いし、いろいろと仕事のことを相談したこともありました。

 飛びぬけて現場志向が高く、会場では私の他にも数多くの営業担当者の話に耳を傾け、困ったことがあれば、各地のボトラーの本社と掛け合い、いろいろなサポートをしてくれていました。

 ダメ元で早速、藤野さんに連絡してみます。事情を話し、チェーン本部に行ってもらうことは可能かどうか。競合の牙城に食い入るまたとない機会なので力を貸してもらえないかとお願いしました。現場の一担当者としては結構な勇気を要しましたが、なんと藤野さんと副社長の返事はOKで、一緒にチェーン本部に行くことになりました。