■ LLMを自社グループで開発
スピードを重視して世界中からいち早く優れたソリューションを探し出し、顧客に提供するのが法人事業で基本の進め方だが、生成AIに関しては一歩も二歩も踏み込む。
どう踏み込んでいるかを理解しやすくするため、少し生成AIについて説明する。ChatGPTのような生成AIのサービスを実現するのに必要な要素は2つある。LLM(大規模言語モデル)と呼ばれる膨大なパラメーターを含むソフトウエアプログラムと、LLMを構築し稼働させるハードウエア基盤だ。双方の進化が相まって現在の生成AIが可能になった。
ソフトバンクはLLMとハードウエアの双方で手を打つ。LLMは子会社を設立して開発する。2023年8月に本格始動を表明したSB Intuitions(エスビーインテュイッションズ)がそうだ。同社は独自LLMの研究開発と生成AIサービスの開発、販売、提供を目的に設立された。
2023年度第3四半期の決算説明会に登壇した宮川は「3900億パラメーターの達成に向けて順調に進捗しています」と話した。ここでいうパラメーターはLLMの性能を示す一つの目安になる数値だ。開発元のOpenAIはChatGPTで用いるLLMのGPT-3.5やGPT-4のパラメーター数は公表していないが、2020年に発表され、あたかも人間が書いたような文章が作成できるとして話題を呼んだGPT-3のパラメーター数は1750億だ。3900億パラメーターはGPT-3の2倍強に相当する。
日本企業で独自にLLMの開発を表明したのは、NECや富士通などのコンピューターメーカー、強力な研究機関を持つNTT、AI関連のスタートアップ企業などに限られる。LINEヤフーのような子会社を持つとはいえ、自社で作るよりもいいものを売るイメージの強い同社からすると意外とも思える決断だ。
独自のLLMを開発するのは簡単ではない。しかもその規模は3900億パラメーターと国内最大級だが、宮川は「やれるチャンスがあって、やれる人材がいて、資金も何とかなるソフトバンクだからこそ今やるべき存在ではないかということです」と意気込む。
<連載ラインアップ>
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■第7回 2万人の従業員にソフトバンク版AIチャットを導入、全社員を巻き込んだ生成AI活用コンテストとは?(本稿)
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