デンソー ソフトウェア改革統括室シニアアドバイザーの矢野健三氏(撮影:堀江宏旭)

 40年以上にわたり車載ソフトウェアを開発してきたデンソー。同社は2019年から「ソフトウェア改革」を経営課題 の1つに掲げ、ソフトウェア人材の育成を進めている。「キャリアイノベーションプログラム(CIP)」「人材情報DX基盤」「ソムリエ認定制度」など独自の人材育成プログラムを立ち上げ、ソフトウェア技術者のスキルアップとキャリア開発支援に取り組む。その具体的な取り組み内容について、ソフトウェア改革統括室シニアアドバイザーの矢野健三氏に話を聞いた。

本稿は「Japan Innovation Review」が過去に掲載した人気記事の再配信です。(初出:2024年2月8日)※内容は掲載当時のもの
特集・シリーズ
シリーズ DX人材 ~人材こそがDX推進の鍵

今企業には、デジタル技術を武器に業務を見直し、事業を創り、そして企業を変革していく者、すなわち「DX人材」が必要だ。本特集では、DX人材の育成にチャレンジングに取り組む企業を取材し、各社の育成におけるコンセプトやメソッドを学んでいく。

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開発量1000倍、デンソーがソフトウェア人材の育成に力を入れる理由

——全社付きのソフトウェア改革統括室を設置するなど、デンソーではソフト関連のデンソーグループ会社を含め全社を挙げてソフトウェア改革を推進しています。どのような改革を進めているのでしょうか。

矢野 健三/デンソー ソフトウェア改革統括室シニアアドバイザー

1984年にデンソーに入社後、パワートレイン用電子制御ユニットの企画・先行開発・量産設計に従事。2010年よりドイツアーヘン研究所へ出向し、欧州電子領域および欧州技術全体を統括。2018年よりエレクトロニクス事業部ボデー領域担当、2020年よりデンソーグループのソフトウェア改革推進を担当。

矢野健三氏(以下敬称略) CASE時代が到来し、さらなるクルマの進化やより利便性の高い未来のモビリティ社会の実現に向けて、ソフトウェアの重要性がより一層高まっています。この背景から、デンソーでは2019年12月にグループ全体のソフトウェア開発力強化を重要な経営課題として掲げ、グループ横断の「ソフトウェア改革」に取り組むことを2025年に向けた経営方針と位置付けました。

デンソーでは、これまでにも車載ソフトウェア開発の豊富な実績があります。しかし、CASE時代では、クルマに搭載されるコンピューターが大規模化かつ複雑化し、開発量が従来以上に増加すると言われています。加えて、それらのソフトウェアが車内外の他のソフトウェアとつながり、連携するといった領域をまたいだ協調制御が求められています。こうした中でデンソーはソフトウェア技術者のスキルの高度化や多様化に向けた仕組みや諸制度の拡充に取り組んでいます。

——ソフトウェア改革を進めるために、どのような人材が必要でしょうか。

矢野 従来の車載ソフトウェアの開発スキルを深化、拡大させるだけでなく、先ほど話したように、CASEの進展に伴い外部のITシステムやクラウドと連携させる新領域の 技術スキルが必要です。また、デンソーではソフトウェア自体を商材とした事業展開を進めており、新しい価値を創造して事業化するスキルや、モビリティ社会を実現するための多様なシステム構築のスキルが不可欠だと考えています。

 これらの多様な ソフトウェア人材を増やしていくために、外部からの採用だけでなく、車載システムを理解した社内のソフトウェア技術者の育成に注力しています。