写真提供:旭化成株式会社

 4年連続で「DX銘柄」に選定されるなど、デジタル先進企業としての地位を確立しつつある旭化成。同社はいかにしてDX化に向けた全社改革に取り組んできたのか。本連載では『人・データ・組織風土で奏でる 旭化成のデジタル共創戦略』(旭化成株式会社デジタル共創本部編/中央経済グループパブリッシング)から、内容の一部を抜粋・再編集。同社のDX史をひも解きながら、組織形成や人材育成など、企業に求められるDX戦略の在り方を探る。

 第6回は、旭化成がDX拠点として整備した新たなオフィス「CoCo-CAFE」を紹介。イノベーション創出を狙いとし、随所に工夫を凝らした施設コンセプトにスポットを当てる。

<連載ラインアップ>
第1回 旭化成が全社一丸のDXビジョン策定のため「とりあえず合宿」を行った理由とは?
第2回 旭化成が「DXブーム」の始まりとともに開始していた「CORE Project」とは?
第3回 旭化成グループ横断のDX組織「デジタル共創本部」はいかにして生まれたか
第4回 化学企業である旭化成はなぜ、DX人材に選ばれる組織となり得たのか
第5回 対象は全従業員、旭化成が進める「デジタル人材4万人化計画」の中身とは?
■第6回 旭化成の新たなDX拠点オフィス「CoCo-CAFE」がつくり出す「共創」と「集中」とは?(本稿)


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CoCo-CAFEの特徴

人・データ・組織風土で奏でる 旭化成のデジタル共創戦略』(中央経済グループパブリッシング)

 イノベーションを生み出すような知的生産活動を促進するためには、集中業務とコミュニケーションの双方が重要です。この2つの業務行動のバランスをとることが求められます。

 ミーティングに関しては、参加人数や、プライバシーの要求レベル、バーチャルかリアルかといった様々な要件に柔軟に対応できることが求められます。デジタルツールの活用には、機器類などのインフラの整備だけではなく、運用の簡素化や電子化の促進も不可欠です。

 また、社員同士の交流は、誰がどのようなスキルや知見を持っているのかを知る契機となるため、出会いを促す仕掛けも重要です。さらに、DXの加速に伴う人員増に対応するため、オフィスには可能な限り柔軟な設計が求められます。

「CoCo‒CAFE」のオフィスデザインは、「エントランス」と「執務室」という2つの主要エリアに分けられています。エントランスエリアは、来訪者との接点となる場所であることから「港」をイメージし、白と青を基調とした配色でまとめています。

 受付にあるベンチシートには、インナーブランディングの効果も考慮し、旭化成の高級スエード調人工皮革<DinamicaⓇ>を使用しています。その周辺にある会議室には「Harbor(港)」「Lighthouse(灯台)」「Anchor(いかり)」「Pier(桟橋)」といった、情報と人が行き交う港を連想させる名前を付けています。

 エントランスエリアの隣にある「マルチパーパスルーム」はにぎやかな街をイメージしており、まさに多目的に利用するための部屋です。普段、イベント等の利用がないときは、無料でコーヒーやお茶、天然水などを飲むことができ、軽食やおやつ、ジュースなども購入できるカフェのような空間になっています。ここでは自由に席に座って、仕事をしたり、ランチを食べたり、談笑しながら情報交換ができます。

 CoCo‒CAFE内だけでなく他拠点とも技術的な情報共有を行えるよう、発表会などを開催するための機器を導入しています。また、家具類には移動しやすいものを採用し、机や椅子を片付けたり、並べ替えたりすることで、会議やワークショップ等、目的に応じた利用が可能です。

 夕方6時以降は、カウンターに「CoCo‒Bar」という小さな看板を置いて、アルコールを含む交流の場を提供しており、従業員同士はもちろんのこと、社外の方との親睦を深めることができる「共創」の場となっています。