写真:旭化成株式会社、Japan Innovation Review編集部

 4年連続で「DX銘柄」に選定されるなど、デジタル先進企業としての地位を確立しつつある旭化成。同社はいかにしてDX化に向けた全社改革に取り組んできたのか。本連載では『人・データ・組織風土で奏でる 旭化成のデジタル共創戦略』(旭化成株式会社デジタル共創本部編/中央経済グループパブリッシング)から、内容の一部を抜粋・再編集。同社のDX史をひも解きながら、組織形成や人材育成など、企業に求められるDX戦略の在り方を探る。

 第1回は、同社でDXビジョンの検討がスタートした2020年当時を振り返り、全社一丸となれるビジョン策定のためにまず実施した、白熱の「検討合宿」の模様を紹介する。

<連載ラインアップ>
■第1回 旭化成が全社一丸のDXビジョン策定のため「とりあえず合宿」を行った理由とは?(本稿)
第2回 旭化成が「DXブーム」の始まりとともに開始していた「CORE Project」とは?
第3回 旭化成グループ横断のDX組織「デジタル共創本部」はいかにして生まれたか
第4回 化学企業である旭化成はなぜ、DX人材に選ばれる組織となり得たのか
第5回 対象は全従業員、旭化成が進める「デジタル人材4万人化計画」の中身とは?
第6回 旭化成の新たなDX拠点オフィス「CoCo-CAFE」がつくり出す「共創」と「集中」とは?

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DXビジョン作成の経緯

人・データ・組織風土で奏でる 旭化成のデジタル共創戦略』(中央経済グループパブリッシング)

 2020年11月中旬、新組織(デジタル共創本部)立ち上げの構想と並行して、DXビジョンの検討を開始しました。DXビジョン策定の目的は「旭化成としてDXの取組みの進むべき方向性を明らかにする」ことです。

 すでに社内で様々なDXの取組みが行われており、それぞれのテーマは現場に寄り添いながら強い「変革への想い」をもって進められている一方で、旭化成がDXによってどう変わっていくのか、どのような企業を目指すのか、というビジョンは存在していませんでした。また、DXは一部のエキスパートによって進められるのではなく、全社一丸となって同じ方向に向かって取り組むべき活動です。このような課題認識から、すべての社員が共感でき、同じ方向を向いてDXに取り組んでいくためのDXビジョンが必要だと考えるに至ったのです。

DXビジョン検討合宿

⑴ 合宿の目的

 DXビジョンの策定に向けて実施したのが「DXビジョン検討合宿」です。4月の新組織発足まで時間がない中で、短期間に多様なメンバーを集めて一気に検討を進めようということで、コロナ禍の中ではありましたが、「とりあえず合宿」を行うことにしたのです。これは非常に効果的な提案であったと思います。

 迅速にメンバーの選定と合宿所の手配が進められました。合宿参加メンバーは多様性を意識して、経営企画部、人事部、広報部、事業部、マーケティング部門、デジタル部門のリーダーに加え、経営層から副社長2名も選定しました。12月に入ってからの調整となったので、日程調整と合宿の場所を押さえるのに非常に苦労しました。

 合宿では「2030年、旭化成が考えるDXによる、より良い社会・業界の未来像をオープンにディスカッションし、DXビジョンの原案をつくること」を目標に検討を進めることとしました。検討に着手する際に、旭化成ではDX推進を単なる効率化としてだけではなく、事業の高度化や新事業創造のための“Challenge” として捉えていること、DXビジョンによって、事業の高度化・新規事業を非連続に加速させる原動力とすること、の2点をDXビジョンの位置づけとして設定しました。