日常時だけを考えると、まさにそこは“レッドオーシャン”。あらゆる企業が商品やサービスを生み出そうとしている領域であり、その範囲だけで発想しようとすると、結局のところ細かい機能や価格といったところでしか差別化できなくなってしまい、“消耗戦”の様相を呈することになります。

 そこで、「フェーズフリー」というフィルターを通してみましょう。すると、アイデアを生み出すための視野は日常時から非常時にまで広がります。日常時にも非常時にも価値あるもの、役立つサービスは何か、と発想の可能性を広げることで、これまでにない商品やサービスを生み出すヒントとなるのです。では、具体例を見てみましょう。

事例
コクヨ コンパクトテーブル「MULTIS」

 オフィス家具や文具で知られるコクヨも、まさにそういったフェーズフリーの有用性に着目し、共感してくれた企業のひとつです。

 コクヨのフェーズフリーへの取り組みがはじまったのは、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)が流行する以前の2019年。コクヨにとっての顧客である企業や自治体などで、少しずつ「働き方改革」が進み、テレワークや複業など多様な働き方が広がり始めた頃でした。

 それにともない、誰もが働きやすい新しいオフィス環境を模索する動きを感じたコクヨは、これまでとは違った視点での商品開発の必要に迫られます。そこでコクヨが着目したのがフェーズフリーでした。

 そうして生まれたのが、コンパクトテーブル「MULTIS(マルティス)」です。

 MULTISはコンパクトテーブルの名のとおり、幅80㎝奥行き60㎝と非常に小さく、誰でも簡単に持ち運べるテーブル。テーブルの脚にはマグネットがついていて簡単にテーブル同士を連結することが可能なため、ソロワーク用に切り離した状態から、瞬時にミーティング用デスク環境に切り替えられるなど、多様化するワークスタイルに柔軟に対応したオフィス活用が可能です。