日清食品ホールディングス(以下、日清食品HD)は、OpenAIのGPT-4を基盤とした“社内版ChatGPT”「NISSIN AI-chat powered by GPT-4」(以下、NISSIN AI-chat)を2023年4月に公開。現在は営業やマーケティングなどさまざまな部門が活用し、生産性向上につなげている。開発の経緯、現場での利用状況などについて、開発・運用を担当する同社執行役員・CIO(グループ情報責任者)の成田敏博氏に話を聞いた。
生成AIを「社内インフラ」にせよ
——日清食品HDでは“社内版ChatGPT”である「NISSIN AI-chat」を開発し、積極的にAI活用に取り組んでいます。そもそも、なぜ開発・社内展開しようと考えたのでしょうか。
成田敏博氏(以下敬称略) 当社のCEOである安藤宏基がChatGPTに初めて触れた時、衝撃を受けたそうです。日清食品グループの今後の経営課題をChatGPTに投げかけたところ、彼自身の立場から見ても非常に的を射た答えが返ってきたからです。この経験から、安藤CEOは「社員が生成AIを使いこなせるようになれば、日清食品グループの競争力を高めることができるのではないか」と考えました。これがきっかけとなり、自社専用のChatGPT環境を構築することになりました。
──社内で展開し始めてから1年弱が経過していますが、現在はどの程度社内にNISSIN AI-chatが浸透しているのですか。
成田 全社員のうち、30%(2023年末時点)がNISSIN AI-chatを利用しています。当初は2割ほどの利用率で利用者も営業部門などに偏っていましたが、現在は生産部門やマーケティング部門、財務部門、人事部門など、ほとんどの部門で活用が進んでいます。
NISSIN AI-chatを共同開発したマイクロソフトさんによると、社内版のChatGPTの利用率には“3割の壁”があるとのことです。現在は各部門にNISSIN AI-chatのベストプラクティスや業務シーンごとの活用方法など、さまざまな知見が蓄積されてきていますので、今後はもっと利用が進んでいくと確信しています。
──各部門はNISSIN-AI chatを具体的にどんな業務で利用しているのでしょう。
成田 NISSIN AI-chatの利用方法としては、「企画提案・アイデア出し」といったユースケースをよく耳にします。
例えば、6~7割の社員が利用する営業部門では、NISSIN AI-chatを「(アイデア出しの)壁打ち相手」に使っています。
営業担当者にとって、日清食品の商品を小売店の店頭に並べてもらい、効果的なプロモーションを打つことは売り上げアップにつながる重要な業務です。従来は売り場に掲げるキャッチコピーなどを独力で考えていましたが、現在はNISSIN AI-chatをアイデア出しのパートナーに使っています。