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 マーケティング戦略の中でもブランディングは、「好感度」や「ロイヤルティ」など“ふわっとした”イメージで語られることが多かった。そうした中、ユニリーバ本社でグローバルなブランド戦略設計を担った経験を持つ木村元氏は、顧客による購買をゴールに据え、売上や利益への貢献度なども含めたスコアとしての「ブランド・パワー」を提唱している。本連載では、同氏の『ブランド・パワー ブランド力を数値化する「マーケティングの新指標」』(木村元著/翔泳社)から内容の一部を抜粋・再編集、数値化したブランド・パワーをマーケティングに落とし込む方法を解説する。

 第1回は、「ブランド・パワー」考案に至った同氏の原点を紹介する。

<連載ラインアップ>
■第1回 元ユニリーバのマーケターが語る、なぜ事業成長にはブランディングが重要か(本稿)
第2回 0から1を生み出す、ユニリーバの中長期的なブランド力向上の仕組みとは?
第3回 重要なのはブランドか、営業か? ユニリーバで考えた売上拡大の独自ロジック
第4回 CMを打ったものの・・・「認知率」が上がったのに、なぜ売上が増えないのか
第5回 なぜLUXの広告には、髪にツヤのあるハリウッド女優が起用され続けたのか?

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明日の売上なくして未来の競争力は創られない

 マーケティングやブランディングは、特にその定義について、様々な意見や議論があります。先に結論を述べましたが、「ブランディングこそが中長期的な事業成長のために最も本質的で最も重要な方法論のひとつである」というのが本書での考え方です。

 はじめに、私がこう考えるに至った経緯、これまでの試行錯誤についてお話ししていこうと思います。私の略歴やユニリーバ社内の組織に関する話も割合多く含まれていますが、お付き合いください。

 私は、2009年にユニリーバ・ジャパンに新卒で入社しました。ユニリーバには約14年間在籍し、「LUX(ラックス)」や「Dove(ダヴ)」といったグローバルブランドのマネジメントやスキンケアブランドの統括などに従事してきました。ロンドン本社では、Doveのグローバル本部担当として出向し、世界各国のブランドマネージャーや経営陣とディスカッションしながら、グローバルのブランド戦略をリードするという貴重な経験もさせていただきました。私のマーケターとしての視野はここで何倍にも広がったと感じています。

 世界がコロナ禍の混乱に入ったタイミングと時を同じくして、2020年に日本に戻ってきてからは、ユニリーバがM&Aした「ラフラ・ジャパン」というスキンケアブランドをグローバル展開する企業に出向し、M&A後の組織統合や事業のV字回復に努めました。

 今日までキャリアの大半でマーケティングと経営を学んできた私ですが、実は、新卒時は営業として入社しています。学生の頃から、ゆくゆくは経営の道に進みたいと考えており、「営業経験なしに良い経営者にはなれない」と何かの本で読んだのか、諸先輩方に言われたのか、そのアドバイスに忠実に従い、自ら営業を希望したのでした。