lunamarina/Shutterstock.com

 マーケティング戦略の中でもブランディングは、「好感度」や「ロイヤルティ」など“ふわっとした”イメージで語られることが多かった。そうした中、ユニリーバ本社でグローバルなブランド戦略設計を担った経験を持つ木村元氏は、顧客による購買をゴールに据え、売上や利益への貢献度なども含めたスコアとしての「ブランド・パワー」を提唱している。本連載では、同氏の『ブランド・パワー ブランド力を数値化する「マーケティングの新指標」』(木村元著/翔泳社)から内容の一部を抜粋・再編集、数値化したブランド・パワーをマーケティングに落とし込む方法を解説する。

 第4回は、一般に言われる「ブランド認知」を細かく分類することで、売上・収益との関連性を見ていく。

<連載ラインアップ>
第1回 元ユニリーバのマーケターが語る、なぜ事業成長にはブランディングが重要か
第2回 0から1を生み出す、ユニリーバの中長期的なブランド力向上の仕組みとは?
第3回 重要なのはブランドか、営業か? ユニリーバで考えた売上拡大の独自ロジック
■第4回 CMを打ったものの・・・「認知率」が上がったのに、なぜ売上が増えないのか(本稿)
第5回 なぜLUXの広告には、髪にツヤのあるハリウッド女優が起用され続けたのか?

※公開予定日は変更になる可能性がございます。この機会にフォロー機能をご利用ください。

<著者フォロー機能のご案内>
●無料会員に登録すれば、本記事の下部にある著者プロフィール欄から著者フォローできます。
●フォローした著者の記事は、マイページから簡単に確認できるようになります。
会員登録(無料)はこちらから

■本書におけるブランド・パワーの構成要素

 ブランドエクイティの代表的な考え方であるアーカーモデルとケラーモデルは、自社ブランドの価値を高めるために、一種のフレームワークとして世界中のグローバル企業に活用されています。業界や業種、市場環境に合わせて、各社独自のアレンジを加えながら、個別に進化し続けています。

 一方で、先に述べた通り、ブランドそのものを企業の資産として捉えるブランドエクイティの考え方は、マーケティングの実務に落とし込むには少々複雑かつ難解です。実際、ブランドエクイティを指標として取り入れ定点観測していくには、ブランディング専門のコンサルティング会社に依頼するなど高額な費用が発生することが多く、結果として大手ブランドにしか使えない指標になってしまっていると認識しています。

 私が本書を書く目的は、マーケティングに従事するあらゆる実務家において、ブランドパワーが定常的に数値化およびトラッキング可能な数値として認識・活用されることにあります。そしてその先には、日本企業にも、ブランドが持つ根元的な力に目を向け、ブランドの競争力を高めるという方針のもと、継続的かつ再現性のある形でブランディングに力を入れてほしいという思いがあります。

 その実現のためには、できる限りブランドパワーの構成要素をシンプルに研ぎ澄まし、日々のマーケティング業務に落とし込める具体的な指標にする必要があります。

 そこで、本書では、従来のブランド論をベースにしながら、次の二つをブランドパワーの構成要素とすることにします。売上との相関性を見出すことを第一目的とし、【図表2-4】のパーチェスファネルに寄与する構成要素を抽出しており、Mental Availabilityを数値化する試みもここにヒントを得ています。

  1. ブランド想起
     ブランドに対する認知の「量」と「質」を測る指標。ブランドがどれくらいの顧客に知られているかという認知の量と、顧客がブランドにどのくらい興味を持っているか、購買の選択肢に入ることができるほどの良質なブランド認知になっているかという認知の質を測る。
  2. ブランドイメージ
     ブランドが、どのように顧客に認識・理解されているかを示す指標。ブランドから連想されるイメージの強弱を競合と比較しながら数値化する。