UCCジャパン執行役員 サステナビリティ経営推進本部長の里見陵氏(撮影:今祥雄)

 レギュラーコーヒーと業務用・家庭用・工業用コーヒーの各市場でシェア首位のUCCグループは2022年に「サステナビリティ指針」を制定した。指針を制定した理由と具体的な取り組み、そして企業がサステナビリティ推進において求められることを、UCCジャパン執行役員 サステナビリティ経営推進本部長の里見陵氏に聞いた。

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コーヒーづくりに不可欠なサステナビリティ

——UCCホールディングスは2022年に「サステナビリティ指針」を制定しました。どのような理由から制定したのでしょうか。

里見 陵/UCCジャパン執行役員 サステナビリティ経営推進本部長

アーサー・ディ・リトル、A.T.カーニーなどに勤務した後、2017年、UCCホールディングス入社。同社執行役員CSO、UCC上島珈琲取締役副社長などを歴任し、2023 年より現職。

里見陵氏(以下敬称略) 社会課題解決を重視する社風である点は、理由の1つとして挙げられます。例えばコーヒー生産地支援の取組みは、サステナビリティという言葉が世の中になかった時代から取り組んできた歴史があり、企業の社会的価値と経済的価値の両立を目指す社風です。

 当社は事業ポートフォリオのほぼ全てがコーヒーと関係します。コーヒー豆がどのような場所で採れるかご存じですか? 赤道を中心とした北回帰線と南回帰線の間の「コーヒーベルト」と呼ばれる緯度でしか採れません。

 熱帯ですが、暑ければ良いというわけでもなくおいしいコーヒーには寒暖差が必要で、高地での生産が適しているとされます。つまり、コーヒーの生産は気候変動に大きく影響されるのです。また、農地を開拓するにあたり森林を切り開いてきた過去もあり、森林保全にも関係します。生産者は小規模農家が多く、働く方の人権も重要です。

 当社はコーヒーに関するあらゆる事業を展開しています。コーヒー豆がなくなれば私たちのパーパス&バリューである「より良い世界のために、コーヒーの力を解き放つ。」の実現も不可能です。

 よって、社会課題としても経営的な課題としても、サステナビリティを重視しているということです。

——特に事業と大きく関連するところでは、「2030年までに自社ブランドを100%サステナブルなコーヒー調達に」をサステナビリティ・フレームワークの1つに掲げられています。

里見 実際の取り組みとして、「サステナブルなコーヒー調達」のロゴを作成しています。環境保護やフェアトレードなどに関連する10団体と連携の下、サステナブルに調達されたコーヒー豆を50%以上使用する製品に表示しています。

 2024年の現時点で、2024年にはさらに製品開発を進め、業務用まで含めればおよそ60品にこの表示がされる予定です。2030年には100%サステナブル調達とする方針です。

 われわれのサステナブル調達の枠組みは多くの団体と連携・合意したもので、活用がしやすい包括的・汎用的なものです。現状でロゴが表示されているのは当社の製品のみですが、サステナブル調達が業界全体に広がることがサステナビリティの観点で非常に大事であると考えているため、ぜひこの枠組みが業界全体で活用できるようなものに発展すれば良いなと考えています。