ビジネス書の名著・古典は多数存在するが、あなたは何冊読んだことがあるだろうか。本連載では、ビジネス書の目利きである荒木博行氏が、名著の「ツボ」を毎回イラストを交え紹介する。
連載第8回は、インテルの元CEOアンドリュー・グローブが著し、シリコンバレーの経営者たちに読み継がれる不朽の名著『HIGH OUTPUT MANAGEMENT』(アンドリュー・S・グローブ著、日経BP)を取り上げる。
マネジャーとは何をする人か?
ようやく4月を迎えた。
皆さんもこの4月に立場が変わり、マネジメント職に就く人もいるかもしれない。
もしあなたが「マネジャーとは何をする人ですか?」と聞かれたら、あなたは何と答えるだろうか?
ちゃんとスケジュール管理ができる人?
人材育成ができる人?
メンバーのモチベーションを上げられる人?
多分、どれも間違っていないが、インテルの創業者である故アンドリュー・グローブに言ったら、おそらく一喝されるだろう。「おまえはマネジメントの本質が分かってない」と。
グローブにいわせれば、マネジャーの役割に関する定義は一つ。それは、「組織のアウトプットを最大化する人」だ。
先ほどの発言にある「スケジュールを管理すること」や「人材育成」などは、アウトプットを高めるための手段に過ぎない。手段が大事なのではない。手段を通じてその先にあるアウトプットを高められたのか? が大事なのだ。
ひょっとしたら「何を当たり前のことを」と感じたかもしれない。しかし、多くの仕事は、「アウトプット」と「手段」の関係が切り離されて、「手段」だけが一人歩きしてしまっている。
例えば、今、営業用の資料を作っているとしよう。この資料作成のアウトプットは何だろうか? この資料作成業務におけるアウトプットは、次の営業先からの受注である。営業先からの受注というアウトプットのために、その手段として資料を作成している・・・はずだ。
しかし、この当たり前の関係性は、時に断ち切られてしまう。例えば、いつの間にか変なことにこだわり始めて、「すてきな資料を作成すること」がアウトプットになってしまうのだ。
繰り返すが、理屈で考えれば当たり前のことだ。しかし、その当たり前を見失い、目の前にある資料に対して自己満足的に熱中してしまう。それくらい、手段には引力があるのだ。
もちろん、このシンプルな事例でいけば、アウトプットと手段の関係性はそれほど難しくない。しかし、これが組織単位になれば・・・? アウトプットと手段の関係は非常に複雑になり、そしてそのために手段の引力のわなに喜んでとらわれていくメンバーも増えていくのだ。
もしそんな状況に心当たりがあるのであれば、先ほど紹介したアンドリュー・グローブが書いた『HIGH OUTPUT MANAGEMENT』を読むことをお薦めする。
この本には、マネジメントの本質を突いた方程式が書かれている。
それは
というものだ。
あまりにシンプル過ぎて、これだけでは意味不明かもしれないので補足しよう。