社員の主体性・自律性の向上を促し、定着率を高めるなどの狙いから、多くの企業で「1on1ミーティング」(1on1)が導入されている。しかし、効果的に実施できている企業は一握りで、1on1を実施しているにもかかわらず、何も語らぬまま会社を辞めていく若者が後を絶たない。なぜ、1on1はうまくいかないのか? 今の若者は何を考えているのか・・・? 本連載は、1on1を核とした世代間コミュニケーションの問題を切り口に、職場の若者を多面的に分析した『静かに退職する若者たち』(金間大介著/PHP研究所)から、内容の一部を抜粋・再編集。若者世代の部下・後輩との1on1の前に知っておくべきことについて解説する。
第1回は、大規模企業調査の結果から読み解ける、1on1における「よくある勘違い」を紹介する。
<連載ラインアップ>
■第1回 あなたが感じた手応えは「本物」か? 見落としがちな1on1の「勘違い」とは(本稿)
■第2回 なぜ、あなたの会社の1on1はうまくいかず、若者が去っていくのか?
■第3回 混同すると逆効果の恐れも? 知っておくべき「1on1」と「コーチング」の違いとは
■第4回 1on1に好意的で仕事に前向きな若者でも、あっさり退職してしまう理由とは?
■第5回 「演技」をするのは当たり前? 「今日は素で話し合います」のワナ
■第6回 上司が喜ぶように「予習」をしてくる若者たちに、どう対応すべきか?(6月12日公開)
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■1on1の目的における「よくある勘違い」
2021年9月に発表された、株式会社パーソル総合研究所の「人事評価制度と目標管理に関する定量調査」によると、1on1の平均時間はおよそ25分となっている(図表2-2)。
この話をすると、「思ったよりも短い」という感想を頻繁にもらう。
パーソルの当該調査は、全国の企業の人事部(主任クラス以上)や経営層・経営企画部など、自社の人的資源管理の全体動向について把握している800名、役職者3000名、役職のない従業員5000名を対象とした大規模なサーベイ(調査)であり、アンケートに大きなバイアスがかかっているとは考えにくい。
考えられる点として、アンケートでは公式の所要時間を回答しているものの、実際にはもう少し長めにやっているのかもしれない。
特に、ミーティングを始める前には、ある程度のアイスブレイクが必要な場合も多いため、「いやー、昨日まで出張だったんだけどさ・・・」と言っているうちに、時間がどんどん経過することなどが考えられる。
ただ、後述するように、1on1の課題の1つに、上司やメンター側の時間不足が挙げられているから、アイスブレイクばかりしているわけにもいかない。
先日ある人に、「1on1では、アイスブレイクばかりしている人も多い」という話をしたら、「本当にちゃんとアイスがブレイクできたら、もうその関係に1on1は必要ないかも」という返答をもらった。
「確かに」「うまいことを言う」と思った。
が、皆さんはそう思ってはいけない。
すでにここまで、かなりの紙幅(しふく)を割いて1on1の本質について議論してきたので、それを繰り返す野暮なことはしないが、現実として、いまだに1on1の目的を「仲良くなること」だと解釈している人が多い。
単に人として仲良くなることと、何を言っても大丈夫、という安心感の下、本音ベースで話し合い、お互いの成長を促すとともに信頼関係を構築していくこととは全く異なる。僕の感触として、年齢が上がれば上がるほど、この区別がつきにくくなっている印象だ。