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 社員の主体性・自律性の向上を促し、定着率を高めるなどの狙いから、多くの企業で「1on1ミーティング」(1on1)が導入されている。しかし、効果的に実施できている企業は一握りで、1on1を実施しているにもかかわらず、何も語らぬまま会社を辞めていく若者が後を絶たない。なぜ、1on1はうまくいかないのか? 今の若者は何を考えているのか・・・? 本連載は、1on1を核とした世代間コミュニケーションの問題を切り口に、職場の若者を多面的に分析した『静かに退職する若者たち』(金間大介著/PHP研究所)から、内容の一部を抜粋・再編集。若者世代の部下・後輩との1on1の前に知っておくべきことについて解説する。

 第4回は、特徴的な3タイプの若者との1on1の「傾向と対策」として、〈積極志向〉タイプの若者の深層心理について解説する。

<連載ラインアップ>
第1回 あなたが感じた手応えは「本物」か? 見落としがちな1on1の「勘違い」とは
第2回 なぜ、あなたの会社の1on1はうまくいかず、若者が去っていくのか?
第3回 混同すると逆効果の恐れも? 知っておくべき「1on1」と「コーチング」の違いとは
■第4回 1on1に好意的で仕事に前向きな若者でも、あっさり退職してしまう理由とは?(本稿)
第5回 「演技」をするのは当たり前? 「今日は素で話し合います」のワナ
■第6回 上司が喜ぶように「予習」をしてくる若者たちに、どう対応すべきか?(6月12日公開)

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■特徴的な3つのタイプの若者との1on1:持つべき意識と対応策

 ここから先は、1on1にネガティブな印象を強く持ち、不要と考えるT4〈表面志向〉および、T6〈回避志向〉の心理をもう少し深掘りしていきたい。

 また、実は最も1on1に好意的で、仕事にも前向きなタイプT1〈積極志向〉にも、大きな課題が存在する。

 それは退職だ。このタイプの人(だと、会社や上司が思っていた例を含む)が、あっさり退職してしまう例が後を絶たない。

 そしてこのタイプの退職は、残された側にとって大きなダメージにもなる。

 そこでこの〈積極志向〉も深耕しつつ、対応策を検討してみよう。

T1〈積極志向〉の深層心理「普段話せないこととかを話せる、いい機会だと思ってます」

 多くの企業において1on1は、普段話しにくいことも共有しよう、という趣旨のもと設定されている。その点において、〈積極志向〉の若者は、とても素直に設定された趣旨を受け取ってくれている。

 彼らは主に、1on1をこんな風に捉えている。

  • 上司や先輩がアドバイスをくれる成長の場
  • やりたいこと(新規案件や部署異動など)をアピールする場
  • 上司や先輩と仲良くなれる場
  • 困っていることや不平不満をぶつける場

 こういったタイプの部下との対話は、きっと楽しく、時間もあっという間に超過してしまうことだろう。

 ただし、良いことづくめでないことも念押ししておく。それは、最後の「困っていることや不平不満をぶつける場」に込められている。

「今日は何でも話してくれて構わないからね」というスタンスで面談に入り、それを素直に受け取ってくれる気持ちのいい若者、それがこのタイプだ。

 彼らはさっそく、自分の業務や所属部署の課題をぶつけてくるかもしれない。〈積極志向〉の若者にとって、助言を踏まえた日々の成長は、仕事をする上での重要な要素の1つだ。

 だから、指導も助言も大好物。難解なアドバイスも厳しい助言も、もりもり食べて大きくなる。

 言い換えると、舌が肥えている。

 もっとストレートに言うなら、日々課題に向き合っている分、人を見る目も養われている。

 上司や先輩であるあなたが、すぐに解決策を提示できるような課題であれば問題はない。あなたのアドバイスが、〈積極志向〉の若者の心に刺さり、あなたの上司としての評価はさらに向上するだろう。