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 業務効率化やアイデア創出など、ビジネスでも多目的に活用されている生成AI。日常的な言葉による指示で利用できるため、利便性は極めて高い。とはいえ、その性能を十分に引き出すには「言葉の選択肢とその選び方」が重要だと、生成AI開発に従事する言語学者・佐野大樹氏は語る。本連載では、佐野氏が言語学の知見から生成AIとのコミュニケーション法を考察した『生成AIスキルとしての言語学――誰もが「AIと話す」時代におけるヒトとテクノロジーをつなぐ言葉の入門書』(佐野大樹著/かんき出版)から、内容の一部を抜粋・再編集。

 第3回は、生成AIへの「指示/質問」にあたる「プロンプト」の構造を概説する。

<連載ラインアップ>
第1回 人工知能の歴史を塗り替えた生成AI、社会に与えるインパクトとは?
第2回 「おはようございます」「おは!」「おはyoo」「GM」をなぜ使い分けるのか?
■第3回 「GSP分析」で導き出した、望ましい「プロンプト」の書き方とは?(本稿)
第4回 「あれ食べてないから、あそこ行こうか」で、なぜ話が通じてしまうのか?
第5回 「富士山の魅力を一文で」どんな条件を加えればAIは名作コピーを生成できるか
第6回 カレーの隠し味のアイデアを、物語調でAIに生成させるとどうなるか?

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生成AI対話の構造ってどんなもの?

生成AIスキルとしての言語学』(かんき出版)

■プロンプトの構造

 基本的には、生成AIとの対話は、プロンプトと呼ばれる対話者から生成AIへの指示や質問と、生成AIから対話者への回答によって構成されています。

 人と人との対話と同様に、やりとりは一度とは限らず、生成AIから回答を受けて、さらにそれに対して、会話を続けることも可能です。

 本書は、生成AIの知識やスキルを引き出すことを目的としているので、特に、生成AIに何か指示を出す、もしくは、質問をする場合のプロンプトの構造と構成要素を見ていきます。

 ここでは、GSP(Generic Structure Potential)と呼ばれるテキストの構造分析方法を使って、プロンプトの構造を見ていきます。

 なんだか難しそうな名前の分析法ですが、簡単に言うと、ある目的のために会話したり、文書を書いたりするときに、その目的を達成するために、絶対に含める必要がある要素と、オプショナルな(あってもなくてもよい)要素は何かを見つけて、それがどんな順番で出てくるかを調べるという方法です。

 例えば、自己紹介することを目的に会話する場面を思い浮かべてみましょう。

 自己紹介するときには、まず名前を言って、その後で、例えば、趣味について説明するかもしれません。もしくは、趣味の代わりに、得意なことを話すかもしれません。

 名乗らないで自己紹介が終わるということは滅多にないと思います。自己紹介において「名乗り」というのは、必須要素であると考えられます。

 一方で、「趣味」や「得意なこと」は、時間がないときには省かれるかもしれません。自己紹介する場面でも「趣味」や「得意なこと」を含めるか否かは、選択できるわけです。

 この意味で、「趣味」や「得意なこと」はオプショナルな要素と言うことができます。