業務効率化やアイデア創出など、ビジネスでも多目的に活用されている生成AI。日常的な言葉による指示で利用できるため、利便性は極めて高い。とはいえ、その性能を十分に引き出すには「言葉の選択肢とその選び方」が重要だと、生成AI開発に従事する言語学者・佐野大樹氏は語る。本連載では、佐野氏が言語学の知見から生成AIとのコミュニケーション法を考察した『生成AIスキルとしての言語学――誰もが「AIと話す」時代におけるヒトとテクノロジーをつなぐ言葉の入門書』(佐野大樹著/かんき出版)から、内容の一部を抜粋・再編集。
第5回は、より目的に合致した回答を得るには、生成AIへの指示や質問をどのように伝えるべきかを解説する。
<連載ラインアップ>
■第1回 人工知能の歴史を塗り替えた生成AI、社会に与えるインパクトとは?
■第2回 「おはようございます」「おは!」「おはyoo」「GM」をなぜ使い分けるのか?
■第3回 「GSP分析」で導き出した、望ましい「プロンプト」の書き方とは?
■第4回 「あれ食べてないから、あそこ行こうか」で、なぜ話が通じてしまうのか?
■第5回 「富士山の魅力を一文で」どんな条件を加えればAIは名作コピーを生成できるか(本稿)
■第6回 カレーの隠し味のアイデアを、物語調でAIに生成させるとどうなるか?
※公開予定日は変更になる可能性がございます。この機会にフォロー機能をご利用ください。
<著者フォロー機能のご案内>
●無料会員に登録すれば、本記事の下部にある著者プロフィール欄から著者をフォローできます。
●フォローした著者の記事は、マイページから簡単に確認できるようになります。
●会員登録(無料)はこちらから
■指示/質問の説明で変わる生成AIの生成プロセス
指示/質問の説明は、生成AIに何かを行わせたり回答させたりする場合、プロンプトの必須要素と考えられます。
指示/質問の説明の仕方は、生成AIがどのように回答を生成するかを誘導するうえで重要になります。
例えば、生成AIに「じゅんさいは、美味しい」と「じゅんさいなおひとやな」という文を、評価を含む文かそうでない文かに分類させるとき、プロンプトに「まず、『じゅんさい』が表す意味について分析し」という手順を含めるか否かによって、正しい答えを導けるかどうかが変わってきます。
指示や質問の仕方を工夫して、生成AIが目的に沿った回答を生成できるように、導いてあげましょう。
なぜ指示や質問の仕方で生成AIの回答が変わってしまうのか。不思議な気もしますが、人同士でも同様のことが起きます。
例えば、いきなり数学の問題を出されて、答えを出しなさいと指示を受けた場合、答えられないこともあるかもしれません。しかし、「この問題は、こういう手順で考えたら解けるよ」と教えてもらってから問題を解くのであれば、いきなりでは解けなかった問題が、今度は答えを導けたりします。
また、焦っていて解けなかった問題でも、「ちょっと落ち着いてからもう一度ゆっくり考えてみなさい」と言われて、一つひとつ手順をゆっくり確認したら、正解できるような場合もあるでしょう。
このように、指示や質問をどう説明するのかは、生成AIがアウトプットをするうえで、そのプロセスを左右し、結果的に、回答結果をも左右する重要な役割を持ちます。
指示/質問の説明をどう生成AIに伝えるのか、言語学的知見を使って、詳しく見てみましょう。