業務効率化やアイデア創出など、ビジネスでも多目的に活用されている生成AI。日常的な言葉による指示で利用できるため、利便性は極めて高い。とはいえ、その性能を十分に引き出すには「言葉の選択肢とその選び方」が重要だと、生成AI開発に従事する言語学者・佐野大樹氏は語る。本連載では、佐野氏が言語学の知見から生成AIとのコミュニケーション法を考察した『生成AIスキルとしての言語学――誰もが「AIと話す」時代におけるヒトとテクノロジーをつなぐ言葉の入門書』(佐野大樹著/かんき出版)から、内容の一部を抜粋・再編集。
第6回は、「文体・スタイル」をはじめとする4つの「言葉の様式」を略説し、その選択が生成AIの回答にどう影響するかを具体例で確認する。
<連載ラインアップ>
■第1回 人工知能の歴史を塗り替えた生成AI、社会に与えるインパクトとは?
■第2回 「おはようございます」「おは!」「おはyoo」「GM」をなぜ使い分けるのか?
■第3回 「GSP分析」で導き出した、望ましい「プロンプト」の書き方とは?
■第4回 「あれ食べてないから、あそこ行こうか」で、なぜ話が通じてしまうのか?
■第5回 「富士山の魅力を一文で」どんな条件を加えればAIは名作コピーを生成できるか
■第6回 カレーの隠し味のアイデアを、物語調でAIに生成させるとどうなるか?(本稿)
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様式の選択で生成AIの表現力・構成力を引き出す
■言葉の様式の選択肢
言語学ではさまざまな観点から言葉の様式について捉えますが、大まかには、次の4つが、言葉の様式の種類として挙げられます。
- 文体・スタイル:「話し言葉らしい」「ですます調」など
- 形式:「箇条書き」「表」など
- 媒体:「新聞」「ブログ」「書籍」など
- ジャンル:「物語」「報告書」「論説文」など
それぞれの観点から、言葉の様式にどのような選択肢があるのかを見ていきましょう。
■文体・スタイルの選択肢
文体・スタイルの選択肢としては、例えば、次のようなものが挙げられます。
まず、話し言葉らしいか、書き言葉らしいかという選択があります。
人と人との対話では、コミュニケーションをするのに音声を使うか、文字を使うかとは別に、話し言葉らしく書く場合もあれば、書き言葉らしく話す場合もあります。
例えば、漫画のセリフなどは、文字によって表された書き言葉ですが、登場人物の会話を描くシーンでは、話し言葉らしい表現を使ってセリフが書かれています。
次に、「フォーマル」か「カジュアル」(いろいろなレベルのフォーマルさやカジュアルさがありますが)か、「丁寧体」か「普通体」か、「ですます調」か「である調」かといった、スタイルの選択があります。
スタイルの選択によって、文末表現だったり、敬語の使用の有無だったり、会話や文章のトーンが変わってきます。
■形式の選択肢
言葉の形式には、表、箇条書き、リスト、番号付きリスト、タイムライン(年表やスケジュール)などさまざまあります。
このような形式は、複雑な内容を理解しやすいように整理したり、参照しやすくしたりするために利用されます。
表は、列と行とで情報を整理します。一般的に、行には項目とその値を入れて、列には種類や属性などを表すことで情報をまとめます。
箇条書き、リスト、番号付きリストは、文章の要点を整理したり、複数のポイントがある情報を、わかりやすく読みやすい方法で提示したりします。順序関係や、いくつの要点があるのかが重要な場合に、番号付きリストを使ったりします。
年表やスケジュールなどのタイムラインは、時間の流れに沿って、出来事の順番や関係を視覚的に表示します。